平凡な人たちの私小説
- nao***** さん
- 2018年9月14日 18時00分
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「それなりに人生を生きてきた人は誰でも、1本は素晴らしい私小説が書ける」というようなことを言っていたのは筒井康隆だったろうか。
はっきりとした輪郭をもって死の影が見える極限の状態で、その恐怖に怯えるのではなく、目をそらすのでもなく、真っ直ぐに目を上げて過去を振り返る人たちの私小説たち。哀しい結末は最初から提示されているが、それを覚悟した人生の総括的な物語というわけでもなく、残された誰かへの特別なメッセージというわけでもない。しかしやはり死を強く意識した、極めて個人的な物語の中にある普遍的な命への祈りが感じられる。
単純なリアリティというなら、人質たちの文章や語り口があまりにも上手すぎて、途中から舞台劇を観ているような気持ちになった。ある種現実離れした場面設定とあわせて受け容れやすかったが、映画館のような大きなスクリーンで観るとまた違ったかもしれない。あるいは本当に舞台でも観てみたい。
原作は未読だが、朗読はいくつか割愛されている模様。読んでみたいと思う。
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