米国の福祉の現場から
- 一人旅 さん
- 2019年8月19日 21時52分
- 閲覧数 757
- 役立ち度 5
- 総合評価
デスティン・ダニエル・クレットン監督作。
未成年者を保護する施設で働く支援員と入所者の関わりを描いたドラマ。
デスティン・ダニエル・クレットンが2009年に制作した短編映画「Short Term 12」をブリー・ラーソン主演により自ら長編映画化したもので、アメリカにおける福祉の在り方を問いかけた傑作であります。
未成年の男女をケアする施設で働いている支援員の女性:グレイスを主人公にして、同じ施設で働く恋人:メイソンや気の許せる同僚達、入所したばかりの心を閉ざした少女:ジェイデンを始めとした各々複雑な事情を抱えた入所利用者と主人公の関わりを描いた“米国版福祉ドラマ”となっています。
主人公と利用者の物理的・心理的な関わりを通じて、親からの虐待といった深刻な社会問題を浮き彫りにさせていくと同時に、利用者のみならず主人公自身の深く傷ついた心の闇を紐解いていく繊細なドラマで、支援する側と支援される側を並列的に(同じ立場で)描いた作劇に“福祉職員としての在り方”を見出すことができます。また、福祉の現場で働く人間と事務方の人間の意見の乖離や、現場を知らない人間による誤った判断が招く利用者へのリスク等は、アメリカのみならず日本の福祉にも共通する事実であり、福祉業界がリアルに抱える課題を鮮明化してみせた点でも秀逸な作品となっています。
そして、主人公が実践する“利用者の心に寄り添う支援”と“利用者と職員の信頼関係”が福祉の現場で最も大切であることを改めて気づかさせてくれますし、傷ついた利用者と真正面から向き合う大変な日々の中でも、未来への微かな希望で包み込んだ結末が晴れやかな余韻を残してくれます。
詳細評価
イメージワード
- 泣ける
- 悲しい
- ロマンチック
- 勇敢
- 切ない
- かっこいい
- コミカル
このレビューは役に立ちましたか?