ここから本文です

ザ・ホスト 美しき侵略者 (2013)

THE HOST

監督
アンドリュー・ニコル
  • みたいムービー 49
  • みたログ 264

2.86 / 評価:190件

原作の魅力はどこへ?

  • alt******** さん
  • 2016年1月7日 22時34分
  • 役立ち度 6
    • 総合評価
    • ★★★★★

この映画、映像的にはすごく綺麗でしたが、それ以外は全て期待外れでした。この作品には、原作が同筆者の「トワイライト」からは一変、エンダーのゲームや、エイト(8)の筆者が評価するようなシリアス系で、しかも監督が「ガタカ」の監督だっただけに少なくない期待をしていましたが、全てが入っていて、だけど何も描けていないという印象でした。

何が間違っていたかというと表現が難しいのですが、やはり大きいのはバランスでしょう。正確には、恋愛に関する部分はカットしないのに、それ以外の部分をばっさり切りすぎた。例えば、癌に冒され死に行く自身の初めての友人、ウォルターを看取るワンダラーのエピソードは絶対に抜いてはいけなかった。時間がなかったのは分かりますが、物語の中心人物を抜いてしまうのは果たして正しい判断だったと言えるんでしょうか。そうは思えなかったです。

例えば、ソウルを移植された家族の間に産まれ、ソウルを移植されることなく生きている子供の話(両親のソウルはソウルを移植された宿主の子供ではなく、その子自身を望んだ)。このエピソードは後にウェスの死と同じ時に起こっていたことが説明され、ウェスの死の悲しみを一層引き立てることにもなります。

映画では一瞬でワンダラーが掴んでしまったジェイミーの存在も、原作ではメラニーがひたすら(覚醒後、あえてジャレドの名前を出し、間接的にジェイミーの無事も確認しています)隠し続けます。ジェイミーの誕生日に夢で彼の姿を見てしまう、その時まで。そして、メラニーが消えなかった理由も原作では「状況を理解し、抵抗する意志があったから」だったはず。なぜ弟と絡めたのか?余りにも不自然です。

そのワンダラーにしても、治療者(ヒーラー)の所へ向かう途中、意図的に道を外れ手掛かりを追うはずが、映画では脱走として描かれていたり、彼女がソウルの故郷、オリジンの出身者で(Originに産まれたソウルはほどんどの場合、一生そこを出ることはない)、マザー(自分の苦痛・命と引き換えに子孫を残す)の素質を持っており、ほとんど類を見ない程多くの星で生きてきたこと、また、そのために彼女が多くのソウルから尊敬されていること等が全く描かれていなかったりと、かなり違和感がありました。

1つ1つは小さいことで、カットしても本筋に直接は影響のない場面ではあるのですが、それを切りすぎでしまうと、説得力の無い、中身のない「お話」になってしまう。恋愛の描写はあくまでも一つの繋がりの形。それが、映画では細かい話を切りすぎて、友情、家族愛などの様々な人間関係の形が描けなかったために、物語のバランスが崩れ、恋愛だけがメインテーマへと変容してしまった。それがこの映画で起こったことだと思います。

私は本当に何より重要だったのはメラニーとワンダという2人の対話だと思う。互いから本心を隠すことが出来ないから、本音で語り合うことが出来るわけです。

ワンダラーはそこで初めて宿主の命というものについて考え、自分のやっていたことがそこに元々存在していた生物にとってどれ程残酷なことかを理解します。最初、ワンダラーは「ソウルが移植された生物の本来の意識は失われる、それは死ぬのと同じだ」という考えに全く共感出来なかった。それがウォルターやジャイミーとのエピソードを通し、メラニーとの対話を繰り返すことで、「ソウルはみんな似ていてある意味、替えが効く。人間は替えが効かない。自分たちは分かっていたつもりで、本当は分かってなかったんだ。」そう思うようになるのです。そして対話の結論として、ワンダラーは最大の自己犠牲(ワンダラーはいつもマザーになるために命を捧げる最終の死を恐れていた)であり、同時に彼女の取った行動の中で最も利己的な行動(メラニーは彼女が死ぬことを望んでいなかったし、自分が失った物を嘆き悲しみながら生きたくない、この星を去りたくないというのはワンダラー個人の望み)に出るわけで、私はそこまで描けないと、この物語には何の意味もないと思います。

私はこの作品で、原作者さんが描きたかったのは、完全に道徳的に正しい人が人間をどう見るかだと思うんです。ワンダラーはソウルの目を通して人間の残酷さを見て、人間の目を通して人間の良さを知る。その結果彼女が選んだのが、人間になることなんだから、人間も捨てたもんじゃないよねって。だから、この話は一つの人間賛歌だと思っていました。人間って美しいよねって。そして、あの監督なら、この部分だけは絶対に外さないと思ってた。だから、本当に残念です。私にはこの描き方でThe Hostの良さが伝わったとはとても思えない。もっと描くべきことがあったし、描けることがあったと思います。とにかく物足りなかったです。

本当は星1にしようかと思ったんですが、映画化しようと思ってくれた人がいたのは嬉しいので、星2にしておきます。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 悲しい
  • 絶望的
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ