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必死の逃避行

必死の逃避行

DESPERATE

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eig********

2.0

画格は十分。ただしプロットに無理ありすぎ

映画としての画格や編集、出演者の演技などはいずれも申し分のない出来だが、なにせ脚本がいろいろおかしすぎるのでは……。 新婚の運転手が、急な依頼でかけつけた先はギャングによる窃盗の現場。 思わずパッシングで警官に知らせたものの、そのせいで警官とギャングの撃ち合いになって、警官が死亡。ギャングに罪を着せられた挙句、妻を標的にされた男は、妻とふたり逃避行に出る。 まず、なじみでもないのに巻き込んだ運送業者に、捕まった弟の代わりに自首させようとするギャング側の理屈がよくわからない。そんな話を受けるバカな運転手はいないし、警察だって男の素性など調べればすぐわかることだろう。 逃げ出す際に、奥さんに対して詳しいことを最初から説明しないのも、かなりご都合主義的だ。彼のキャラクターなら、さくっと起きていることを奥さんと共有するほうが断然ありそうなものだが。 息せき切って逃げだしたわりには、整備工場で働くとか農場で働くとか結構悠長な話になっていて、ふつうにチェコ式結婚式あげたり夜勤に出てたりして、緊迫感のかけらもない。一方で、「二人が受け取っていないポストの手紙」から、「行先はここで間違いない」って推理するギャングたちの理屈もおかしすぎるだろう(笑)。その割に、農場まで到達するのに奥さんが臨月になるまでかかっているし。 ついでに言えば、主人公に疑いが晴れたことを話さない警察ってのも、ちょっとリアリティがなさすぎる。 総じて、敵味方とも、やけに「牧歌的」だ。 その割に主人公だけがやたら焦ったり悲壮感を漂わしたりしているので、少しバカに見える。保安官を置き去りにして平気なこいつのメンタリティにもひっかかる。「必死の逃避行』をしてる側に感情移入が難しいというのは、映画としてうまくいっていない証左である。 ブラコンのサイコ野郎であるギャングの親分、レイモンド・バーの楽しそうな演技が、たぶんいちばんの見どころといっていいのではないか。 僕はこの人『鬼警部アイアンサイド』や『ペリー・メイスン』で初めて知った口だけど、若いころのレイモンド・バーって指揮者のバレンボイムみたいな顔立ちなのね。弟の死刑執行に合わせて主人公を処刑しようとする幼稚さと狂気が、このノワリッシュなキャラを引き立てている。 あと、罪のない天真爛漫な奥さん役のオードリー・ロングも可憐で美しい。 そういや、思わせぶりに出てきてた少年、結局使わずじまいで終わってたなあ。 もう少しうまい使いようがあったろうに……。

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