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滝を見にいく (2014)

監督
沖田修一
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3.48 / 評価:304件

無事下山できて良かったね♪(ネタバレ)

表題でいきなりネタバレしてごめんなさい。2014年の『滝を見にいく』は、日帰りで低山を歩くのが好きな私のような人間には、身につまされる話である。監督と脚本は「南極料理人」「キツツキと雨」などの沖田修一。前作の「横道世之介」は2時間40分もある大作だったが、本作の上映時間は1時間28分というコンパクトなもの。観ている間まったく退屈せず感情移入できたので、私的評価は文句なしの★5つである。

出演者はすべて合わせて9人(女性の夢に出てくる男性を含めると10人)で、メインで活躍する7人の女性はほとんど演技の経験がなく、オーディションで選ばれた素人だという。製作費をそれほどかけているようには見えない。決して大宣伝を展開してヒットを狙う種類の映画ではないが、こういうアプローチの作品があってもいいと思う。本作を観ていると演技って何だろう?本職の役者と素人の違いってどこにあるのかな?と考えざるを得ない。

そう考えたのは出演者も同様で、主人公役の根岸遥子さんは「監督から“演技などしないで自分らしくセリフを話してくれればいいです”と言われたが、“自分らしいって、自分はいったいどんな人?”という課題に頭を悩ませました」と語っている。映画を観る醍醐味として、他人の人生の断片に触れることで内なる自分と対話する事があると思うが、カメラの前に立つ役者もまた必死に自らと対話してしたのかも知れない。

舞台は新潟県の妙高高原。そこにある「幻の大滝」と温泉(赤倉温泉のことだろう)をめぐる日帰りバスツアーに7人の中高年女性が参加した。頼りないツアーガイド(黒田大輔)に従って山道を歩いていくが、このガイドはまるで土地勘がないらしく、不安そうに地図をめくっては「様子を見てくる」と言い残して7人を残して姿を消してしまう。
妙高高原は、私がほんの小さい頃に家族で旅行したことがある。妙高山頂を目指したがきつい道のりで、登頂を断念して引き返した。父はそれが心残りだったらしく、何年か後に一人で妙高山に再挑戦して登頂に成功した。こんど父に会ったら、その時のことを聞いてみようと思う。それはともかく、映画では黄色を主体として色づいた秋山の美しさが心に残った。

ガイドがなかなか戻ってこないのに不安を募らせる7人。「そういえば、この仕事を始めて間が無いと言ってたわね」。携帯電話は圏外で繋がらない。そこで二手に分かれ、一部メンバーがガイドの捜索に向かうものの発見できず、自分たちだけで下山する事になる。近道の表示板に従って進むが、途中で道が分からなくなり、方位磁石も役に立たない。下山路を見失ったまま日が暮れてしまい、7人は山中で夜を明かす事に・・・。

私自身、秋の奥多摩で道に迷ってしまい一晩を山中で過ごした事がある。木々の葉が落ちる秋の森は、深緑の季節に比べ見通しは良いのだが、地面に積もった落ち葉のせいで登山道とそれ以外の場所を見分けにくい。山道によっては道の脇にある木にテープを巻いて目印にしているが、暗くなればそれも見えなくなる。秋は昼間の時間が短く、日が暮れると気持ちが焦って判断ミスに繋がりかねない。後になって「なんであんな所で迷ったのかな」と思うが、山には人の感覚を狂わせる魔物が潜んでいるのかも知れない。映画で7人が遭難に至る経緯と自分の経験を重ね合わせて、苦々しい気持ちになった。

メンバーの一人に腰痛もちの女性がいるが、かえって彼女がいた事で慎重に行動できて良かったと思う。ほかに幸運だった点を挙げてみると、まず悪天候に遭わなかった事。滑落するような危険な箇所に立ち入らなかった事。食料としてキノコを採るシーンがあるが、幸い毒キノコではなかった事。クマのような危険な動物に会わなかった事(代わりにヘビを捕まえて、キャーキャー騒ぎながら焼いて食べるシーンがある)。そして7人が最初のガイド捜索以外は、常に一緒に行動していた事だろう。

「山には人の感覚を狂わせる魔物がいる」と書いたが、逆もなた真なりで、山中に取り残されて死ぬかもしれないという経験をすると、かえって自分の眠っていた感覚が目を覚ますというか、生きようとする本能が発揮されるのである。『滝を見にいく』が面白いのは、そこを描いているからだと思う。アニメ「もののけ姫」の「シシ神は命を奪いもするし、与えもする」というセリフと通じるものがある。7人が少女のように縄跳びをしたり、葉っぱの仮面をかぶって太極拳を踊るシーンはファンタジー映画のようであった。

当初の旅の目的であった「幻の大滝」は最後の最後に登場する。『滝を見に行く』というさりげないタイトルが、とても重たい意味を持って迫ってくるのだ。とはいえ本作は気楽なコメディ映画。7人の軽妙なやり取りを「あるある」「分かるぞ~」って感じで楽しんでしまえばいいだろう。

詳細評価

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