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ムーンライティング

nic********

4.0

「移民労働者」に対する試金石みたいな作品

物語は、祖国ポーランド人からイギリス・ロンドンにやって来た、4人の不法就労者を中心に展開する。彼らのミッションは、古い家の改修工事。祖国では簡単には手に入らない大金をお目当てに日々肉体労働に勤しむが、ひとり英語を解するノヴァク(ジェレミー・アイアンズ)だけが、祖国でクーデターが起こり、戒厳令が敷かれたことを知る。しかし作業の遅れを恐れたノヴァクは、その事実を仲間たちにひた隠しにして、よりいっそうの過重労働を彼らに強いる。 異郷の地で四人きり、手持ちの資金も底をつき、スーパーでの万引きや自転車泥棒で食料を調達したり、物資の買い出しに奔走するノヴァク。祖国に置いてきた美人妻と社長の仲を邪推しては眠れない夜を過ごしたり、限られた娯楽用にと中古のテレビ受像機を入手するものの、すぐ故障して映らなくなったり…などなどの「不幸のつるべ落とし」に見舞われつつ、必死でミッションを遂行しようとする姿がいじましくも笑える。 90分余りの本編の過半が、家の改装作業(ほぼ解体に近い、砂塵の舞い上がり!)とスーパーや小売店での万引きシーン(ハラハラドキドキ!)に終始するのだけれど、不思議に飽きさせない。文字通りの「四面楚歌」状態に陥りながら、主人公であるノヴァクに感情移入させてしまう手練は、お見事。 独立自主管理労働組合「連帯」を弾圧するため、ポーランドに戒厳令が敷かれた史実を背景した。イギリス時代のスコリモフスキの集大成的佳作。1982年作だが、まだまだ70年代の独特の色調やファッションの残滓がそこかしこに認められる。ラングラー(Wrangler)ショップのたたずまいは(売り子のチャラい格好も含めて)その辺りに応えてくれるサービスショットか? 第35回カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞受賞。

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