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毛皮のヴィーナス (2013)

LA VENUS A LA FOURRURE/VENUS IN FUR

監督
ロマン・ポランスキー
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3.14 / 評価:135件

小空間と少人数はポランスキーの大得意。

  • tak さん
  • 2021年5月29日 1時31分
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    • 総合評価
    • ★★★★★

”マゾ”の語源としても知られる作家マゾッホの小説「毛皮のヴィーナス」。その舞台劇を上演しようとするオーディションが不調で終わった夜。脚本家で演出家トマだけが残った劇場に、雨に濡れた女優が一人遅れてやってくる。彼女の名は「毛皮のヴィーナス」の主人公と同じワンダ。トマは彼女を追い返そうとするのだが、ワンダは厚かましくもオーディションを受けさせるように粘り始めた。二人だけのステージで始まった演技。ワンダはこの作品が”SM小説”だと自分の考えを主張し、トマは”愛の物語”だと脚本家の立場で反論する。演技の間に激しい論争を交えながら、数ページで終わるはずだった二人だけの舞台劇はそのまま続く。そして主導権を執っていた立場が次第に逆転していく。小説の主人公セヴリンは自身の投影ではないとトマは力説するのだが、やがて彼の言動はワンダのリードで変化を始める・・・。

 ポランスキー監督は舞台で活躍していた経歴があるだけに、監督作の映画には舞台劇的な作品がしばしばある。本作と同じくブロードウェイの舞台劇を映画化した「死と処女(おとめ)」もあるし、代表作「戦場のピアニスト」や「反撥」のように少ない登場人物を掘り下げて描くのも得意とするところだ。この「毛皮のヴィーナス」の登場人物は二人だけ。90分余の上映時間は緊張感に満ちたものだった。とにかく気が抜けない。ワンダの発する言葉から、トマが態度を変えていくタイミングがまったく予測不能なのだ。カメラは二人をフレームから外さないように引いた構図が多いのだが、時々挿入されるアップには強いインパクトがある。特筆すべきはワンダに皮のブーツをトマが履かせる場面。ジッパーを上げながら、観客の視線もトマの視線もワンダの大きく開かれた脚の間へと導かれる。「他の監督ならとっくにヤッちゃってるわよ」と扇情的な言葉を口にするワンダだが、トマは自分は違うと言い張る。だが、彼女のリードに導かれて隠されていた自分をさらけ出していく。

 エマニュエル・セニエは、ポランスキー監督の「フランティック」でハリソン・フォードの相手役を演じた。その後は数々のフランス映画でバイプレイヤーとしても活躍してきた。夫の作品「赤い航路」(変な映画だったな・・・)では性に未熟な若い女だった彼女が、年齢を重ねてこんな役が演じられるようになったとは。トマと共に圧倒されたのはスクリーンのこちら側も同じ。いやはや濃密な時間でございました。マゾッホの原作を映画化したラウラ・アントネッリ(「青い体験」)主演の「毛皮のヴィーナス」が観たくなった。レンタル店あるかな。

詳細評価

物語
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