『おとなのけんか』の方が好きだな
- fg9***** さん
- 2017年3月29日 14時38分
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…ロマン・ポランスキー監督の81歳時の作品だ。
…あらすじは、解説のとおりだけでいいだろう。
ザッヘル=マゾッホ原作の舞台「毛皮のヴィーナス」のヒロインを選ぶべく、古びた劇場で女優たちのオーディションを開いたものの、これと思う女優が結局見つからず、いらだちと落胆を隠せない演出家のトマ(マチュー・アマルリック)。
そこへひとりの女優が遅刻して現われる。
くしくもヒロインの役名と同じワンダ(エマニュエル・セニエ)と名乗る彼女に懇願され、トマは渋々彼女にもオーディションを受けさせることにするが、舞台上でガラリと豹変したワンダに次第に魅了されていく。
ワンダを演じるエマニュエル・セニエ(49歳)は監督の奥さんだそうだ。
で、ワンダがオーディションを受ける前に、発声練習というか早口言葉のようなセリフを豪快に喋る場面は可笑しかった。
で、以下、鄙びた舞台のワンシチュエーションの二人だけの会話劇が1時間半続くのだが、オーディションを受けている現実と、「毛皮のヴィーナス」の脚本のセリフとが混沌とし、本来、ワンダの演技を指導するはずの演出家のトマが、逆に奔放なワンダによって自分の本性を暴き出されていく過程はなかなかスリリングだった。
「毛皮を着たヴィーナス」とは、マゾヒズムの語源ともなった19世紀のオーストリアの作家・ザッヘル=マゾッホの自伝的小説で、その小説を舞台化しようとしたトマは、フィアンセがいるにも関わらず自らの性癖を暴かれてしまったのだった。
ワンダの窮屈なハイヒールを履き、唇に紅を引いて、そこに快楽さえ見い出すマチュー・アマルリックの恍惚とした表情は見事だった。
エンド・クレジットの背景には数々のヴィーナスの名画が映し出されて一興だった。
ポランスキー監督の奥さん賛歌としても十分一見の価値はあったが、会話劇としては同監督の『おとなのけんか』の方が好きなので☆一つ割り引いた。
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