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LAST LOVE/愛人
2014年10月4日公開

LAST LOVE/愛人

R15+1022014年10月4日公開

奥田映二

5.0

こんな居心地のいい映画はない。

なんていうか居心地の良くなる作品だった。 今は世捨て人のようになっている火野正平演じる伝説のギタリストと桜木梨奈演じる双極性障害(躁うつ病)の若いダンサーの女との話だが、これが予想を覆して昨今の邦画にありがちな暗く鬱々とした映画になっていないのが良い。 火野の演じるマンションの管理人の生活の部分も結構長く時間を割いて描かれているがちっとも退屈ではないし、関わってくる住人のエピソードもわざとコミカルにしようとしていなくて好感が持てる。 男は面倒臭いと思いながらもこの厄介な女の世話してしまう。 この女の絡みで管理人という職を失わざるを得ないような状況に陥っても、病院にも連れて行くし、ふたりで住み込みで働ける次の職場を探したりしてずっと面倒をみていくわけだが、それは恋愛感情でもないし娘のように思っているということでもない。 そして或る日この男の奏でるギターとこの女の踊りが一体となる。 共犯者とでも言うのか、戦友とでも言うのか。 精神的な部分だけじゃなく、生きる糧であるギターとダンスを互いに必要としているから嘘くさくない。 これがまさにこの映画の真骨頂の部分で、これはジャズギターというのかな? フラメンコギターのようでもあるがそこまでただただ激しくかき鳴らすというようでもなく、男の弾くギターには優しさも哀愁も感じる。 このギターには例えば津軽三味線のような情念というような形容は当て嵌まらない。 ギターに合わせて女は踊るのだが、これも激しいステップばかりを踏んでいるわけじゃない。 風に乗るような優しく緩やかな振りもある。 言葉では説明できないが敢えて言うとしたら居心地がいいと言うしかない。 ふたりは自転車で放浪生活を送りながらギターと踊りを見せて歩く。 それを見せてギターケースに入れられたお金で生活をしていく。 フェリーニの「道」のように大道芸を見せて。 しかしこの映画には映画で起きるようないわゆる作為的な出来事は起こらないのでふたりはジェルソミーナでもザンパノでもないけど。 ラストも男が女の手を引いて歩いて行くところで終わるのだが、唐突に、あれ?もうここで終わり?とも思うかもしれないが、この田舎道で終わるラストが何だかホッとする。 この生活が続くんだなと思わせてくれるからだ。 こんな押しつけがましくない。 何かを読み取らせようとするでもない。 こんな映画が愛おしい。 火野さんは勿論、この桜木梨奈という女優さんもいい。 それだけ存在感を持った女優さんで、美人じゃあないが何といえば良いか、まあちょっと芋っぽくてどこにでもいそうなねーちゃんだが眼に力があってその眼が非常に可愛くて特徴的だ。 だから桜木さんはこの先、主役しかやっちゃいけないと思う。

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