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駆込み女と駆出し男 (2015)

監督
原田眞人
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  • みたログ 3,536

3.94 / 評価:3,519件

素敵

  • 出木杉のびた さん
  • 2015年5月18日 5時57分
  • 閲覧数 8664
  • 役立ち度 68
    • 総合評価
    • ★★★★★

コメディかと思われるようなタイトルだが、そこは、「クライマーズ・ハイ」「わが母の記」の原田眞人監督作、笑いあり涙ありの風格ある重厚なドラマに仕上がっている。原案の「東慶寺花だより」というタイトルがかなり良いので使って欲しかったが、映画はタイトル通り、駆込み女の鉄練りじょご(戸田恵梨香)と、駆出し男の中村信次郎(大泉洋)が出逢ってからの成長物語になっている。

時は江戸時代後期。老中・水野忠邦の天保の改革により、浮世絵や歌舞伎などの娯楽が庶民から奪われた。そんな時代だからこそ、巷では南総里見八犬伝の完成を、多くの人々が待ちわびていた。一見、物語とは関係ないように思える、この曲亭馬琴(山崎努)のエピソードは、鬱屈した世の中での希望の象徴である。南総里見八犬伝自体、基本勧善懲悪ものであるように、悪政に苦しむ人々の心の支えであったに違いない。また、医者と戯作者の駆出し男である主人公・信次郎の、今後の生き方を左右する、重要なファクターでもある。

滑舌よく、大量のセリフを快適なテンポでしゃべりまくる大泉洋に拍手。粋な言葉の数々、七五調の掛け合いの心地良さ、そしてこの時代の新しき言葉の発見が楽しい。素敵とは、素晴らしくて敵わない様子とは、目からウロコであった。粋とあだっぽさの違いなど、日本の言葉が大切に吟味され、映画に活かされている。

それにしても全体的にセリフの情報量が半端ない。大泉以外の登場人物たちも、実に饒舌である。時に役者同士のセリフが交錯し、実際にその場で話を聞いているような錯覚に陥る。三代目柏屋源兵衛(樹木希林)、お勝(キムラ緑子)、利平(木場勝己)による会話は、まるでセリフのリレー大会みたいで臨場感溢れる。この脇役たちが皆、適材適所の素晴らしい演技を見せる。

キャラが立っている作品でもあるが、特に法秀尼が魅力的。寺法は寺の為にあるのではなく、苦しんでいる人の為にあるのだ、という信念に貫かれた生き方が堪らなくかっこいい。演じる陽月華の、宝塚で鍛えた見事な発声。あの一喝する大声は正に素敵。目を合わせてはいけないという件では、大いに笑わせてくれた。

じょごと共に駆込んで、絆を深めて行くお吟の満島ひかりもいい。眉を剃ったお歯黒の顔は、当初は奇異に感じられるが、そのうち慣れてくる。べらんめぇ口調とあだっぽさが素敵なキャラで、存在感も抜群だ。そして、お吟の駆込みの本当の理由に熱い思いが込み上げる。更に、同時駆込み以来、心を通い合わせるじょごとの絆に涙。

心地良い涙と感動と勇気をもらえた作品であった。江戸時代を懸命に生きる人々の粋を感じ、優しい気持ちにも浸れる。ラストシークエンスが、また素敵であった。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

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  • 勇敢
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