煌めくネオンに誘われて…
- 一人旅 さん
- 2017年11月6日 23時48分
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第64回ベルリン国際映画祭金熊賞。
ディアオ・イーナン監督作。
中国・華北地方を舞台に、連続猟奇殺人事件の謎を追う元刑事の姿を描いたサスペンスミステリー。
ベルリン映画祭で金熊賞と銀熊賞(男優賞)を受賞した中国映画の秀作。主演のリャオ・ファンが魅せる迫真の熱演もさることながら、台湾出身の女優グイ・ルンメイのミステリアスで妖艶な立ち振る舞いが物語に深みを与えています。
1999年に中国・華北地方の地方都市で発生した猟奇殺人事件。事件は迷宮入りしたかに見えたが5年後の2004年に同様の手口による猟奇殺人が再び発生したことで、当時事件を担当していた元刑事ジャンは捜査を再開する。全ての事件の被害者たちと関係があった人物としてクリーニング店で働く未亡人ウーが捜査線上に浮かび上がったことで、ジャンは彼女に接近、事件の真相に迫ろうとするが…という“連続猟奇殺人を巡るミステリーサスペンス”+“主人公と事件に関わりのある未亡人の関係性の変容”を描いた作品で、作劇自体はオーソドックスですがファム・ファタール的ヒロインとして存在感を放つグイ・ルンメイのミステリアスな魅力に惹き込まれます。
そして何より、ディアオ・イーナン監督の類い稀な演出・映像センスが全編に冴え渡り、監督の“見せ方”へのこだわりに唸らされるのです。店のネオンや街灯の灯りを巧みに取り入れたメリハリの強い色彩豊かな映像と白い霧に包まれた街並みの妖し気な映像が見るからに新鮮でこの世の物とは思えない独特のムードを醸成していますし、一人称視点と硬直した引きの映像を織り交ぜたカメラワークにも監督のテクニックが如何なく発揮されています。そして劇中音楽は使用されませんが、雪と静寂に包まれた街に響き渡る、人が殺害される際の無慈悲な音や白昼の打ち上げ花火の轟音が鑑賞後も耳に残ります。
物語以上に演出・映像のテクニックで魅せ切った中国産ミステリーサスペンスの秀作。この“目新しさ”が最高賞受賞の理由でしょう。
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