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薄氷の殺人 (2014)

白日焔火/BLACK COAL, THIN ICE

監督
ディアオ・イーナン
  • みたいムービー 75
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3.33 / 評価:229件

解説

第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞と銀熊賞を受賞したクライムサスペンス。中国北部の地方都市で起きた未解決の連続猟奇殺人事件を追う元刑事の男が、被害者たちと関わりを持つ女に惹(ひ)かれながらも事件の真相に迫っていくさまを独自の映像美で活写する。メガホンを取るのは、『こころの湯』などの脚本を手掛けたディアオ・イーナン。『戦場のレクイエム』などのリャオ・ファン、『海洋天堂』などのグイ・ルンメイらが出演。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

中国・華北地方で切断された死体の断片が次々に発見され、刑事ジャン(リャオ・ファン)が捜査に当たるが、容疑者の兄弟が逮捕時に射殺されたため詳細は誰にもわからなくなってしまう。5年後、しがない警備員となっていたジャンは以前の事件と手口が類似した猟奇殺人が発生したことを知り、独自に調査を開始。やがて、被害者たちはいずれもウー(グイ・ルンメイ)という未亡人と近しい関係だったことを突き止めるが……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2014 Jiangsu Omnijoi Movie Co., Ltd. / Boneyard Entertainment China (BEC) Ltd. (Hong Kong). All rights reserved.
(C)2014 Jiangsu Omnijoi Movie Co., Ltd. / Boneyard Entertainment China (BEC) Ltd. (Hong Kong). All rights reserved.

「薄氷の殺人」正常と異常、現実と幻が混じり合った中国製ノワール

 ベルリン国際映画祭でグランプリと男優賞の2冠に輝いたこの中国映画は、オープニング・ショットからしてギョッとさせられる。トラックに積まれた石炭の山に埋もれた人間の“腕”。しかもその異様なはずの光景は、ごくありきたりな日常のヒトコマのように映し出される。バブル崩壊の危機が囁かれながらも、急激な経済成長に突き進むこの国では、地方から都会へ運ばれる膨大な資源の中に腕の1本や2本くらい紛れ込んでもおかしくない、と言わんばかりに。

 プロットそのものはオーソドックスなミステリー劇だ。死体がバラバラにされた連続殺人事件の捜査線上にひとりの美女が浮かび、その謎めいた魅力に囚われた主人公がどんどん深入りしていく。ところがひとつひとつの描写が、どこか普通ではない。1999年の夏から2004年の冬へと時制が移るくだりは、主人公の車がトンネルをくぐり抜けるシーンの不可思議なカメラワークによって唐突に飛躍する。かと思うと本筋とは何の関係もなく、食堂で出されたタンメンを箸でかき回すと“目玉”がゴロッと現れる奇怪なショットが挿入される。新鋭監督ディアオ・イーナンによる省略を多用した独特の語り口と相まって、正常と異常がざっくりと混じり合ったように酩酊した映像世界にクラクラさせられる。

 そもそもチンピラ風情の主人公ジャンが事件の真相を探る理由は、悪人に法の裁きを受けさせるという元刑事の使命感ゆえではなく、個人的な復讐のためだ。妻に逃げられ、職を失った彼は、鬱屈した感情のやり場を求めるかのように捜査にのめり込み、ファムファタールの魔性に魅入られていくのだ。そして不条理が渦巻く殺人事件の闇の彼方には、息を飲むほど美しい瞬間が待っている。どうしようもなく孤独な男と女にふさわしい、幻のように現実離れした恍惚のエンディングに震えずにいられない。(高橋諭治)

映画.com(外部リンク)

2014年12月24日 更新

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