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繕い裁つ人
2015年1月31日公開

繕い裁つ人

1042015年1月31日公開

gar********

5.0

静謐な密度に満ちた世界観

見終わって印象に残ったのは「音」だ。 足踏みミシンの音、大きな柱時計の振り子の音、本のページをめくる音、何かを始める前の深い吐息の音、布にハサミを入れる音、そしてなによりも衣擦れの音。 編集で足された効果音ではない。まさにその時にその音があることが、空間や時間や行動と同義に映像を構成している。劇伴を意識的に控え、撮る側が相当に意図して作らなければ、こういう音が満遍なく映像にからむことはない。 その音を聴くためにも、劇場で観る価値がある。 いわゆる大画面向きスペクタクルではまったくないけれど、この「音」を大切にした映画の初見が、普通の家庭環境でのDVDになるのは勿体ない。 とても丁寧に、きめ細かく構築された世界観。 主人公の心の変化、周りの人々の心の変化が、決して急ぐ事なく時間をかけて、時間とともに変化してゆく様子が、愛着と適度な客観で描かれて行く。その変化と時間の密度の流れに入り込める人にとっては、これは佳作と呼べる映画だ。 万人向きとは思わないけれど、こういう琴線に触れる作品が好きな人にはお勧めする。 是非、映画館で。

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