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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) (2014)

BIRDMAN OR (THE UNEXPECTED VIRTUE OF IGNORANCE)

監督
アレハンドロ・G・イニャリトゥ
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3.36 / 評価:2,975件

解説

『バベル』などのアレハンドロ・G・イニャリトゥが監督を務め、落ち目の俳優が現実と幻想のはざまで追い込まれるさまを描いたブラックコメディー。人気の落ちた俳優が、ブロードウェイの舞台で復活しようとする中で、不運と精神的なダメージを重ねていく姿を映す。ヒーロー映画の元主演俳優役に『バットマン』シリーズなどのマイケル・キートンがふんするほか、エドワード・ノートンやエマ・ストーン、ナオミ・ワッツらが共演。不条理なストーリーと独特の世界観、まるでワンカットで撮影されたかのようなカメラワークにも注目。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

かつてヒーロー映画『バードマン』で一世を風靡(ふうび)した俳優リーガン・トムソン(マイケル・キートン)は、落ちぶれた今、自分が脚色を手掛けた舞台「愛について語るときに我々の語ること」に再起を懸けていた。しかし、降板した俳優の代役としてやって来たマイク・シャイナー(エドワード・ノートン)の才能がリーガンを追い込む。さらに娘サム(エマ・ストーン)との不仲に苦しみ、リーガンは舞台の役柄に自分自身を投影し始め……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2014 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
(C)2014 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」役者の変化球と鳥の動きや水の動きを取り入れた撮影が悪夢映画の種になる

 長まわし映像の信仰に、私は疑問を持っている。キャメラを延々とまわすだけで面白い映像が撮れると考える馬鹿は論外だが、役者の出し入れや台詞のタイミングなどの精緻な計算を過大評価するのも考えものだと思う。そこで止まると、映画は数学を超えられなくなる。

 注意すべき要素はまだある。シフトチェンジだ。マニュアルシフトの車では、こまめなギアチェンジが求められる。カーブの多い道や高低差のある土地ではなおのことそうだ。長まわしにもシフトチェンジが要る。

 「バードマン」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は、さすがにそこを見落としていない。まず彼は刃の切っ先を定めた。怠惰で貪欲なブロックバスター映画、ショービズ界の自意識過剰、役者たちの肥大したエゴ……これら3つを串刺しにした上で、主人公の「長い悪夢」を映像化しようと企てたのだ。

 そこで彼は工夫を凝らす。最初は、曲者俳優をそろえたことだ。リーガンに扮したマイケル・キートンの傍らにはエドワード・ノートンとエマ・ストーン(3人ともスーパーヒーロー映画に出演した過去がある)を配し、その外周にナオミ・ワッツ、ザック・ガリフィアナキス、アンドレア・ライズボローといった渋い脇役を集めたのだ。劇場の舞台裏という狭い空間に彼らが出没するだけでも、映像は変化球のように曲がったり落ちたりする。

 もうひとつの工夫は、キャメラに鳥の動きと水の動きを取り入れたことだ。リーガンの別自我がバードマンなのだから、これは必然のなりゆきだったか。この手法は狭い空間と広い空間のコントラストを生かせるし、悪夢特有の幻想性や非連続性も獲得できる。

 というわけで、「バードマン」は眼と耳を刺激してくれる悪夢映画になった。惜しむらくは、黒い笑いの量がやや足りなかったことだが、これはないものねだりだろう。長まわしの映像ばかりに眼を取られず、役者の投げる変化球や、針の穴を通すようなイニャリトゥの制球力にも注目していただきたい。(芝山幹郎)

映画.com(外部リンク)

2015年4月2日 更新

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