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フレンチアルプスで起きたこと (2014)

FORCE MAJEURE/TURIST

監督
リューベン・オストルンド
  • みたいムービー 104
  • みたログ 428

3.31 / 評価:302件

上質すぎるコメディ

  • 映画は芸術 さん
  • 2017年1月14日 17時19分
  • 閲覧数 1161
  • 役立ち度 9
    • 総合評価
    • ★★★★★

いろんな意見があると思うが、この映画はコメディである。
雪崩が起き、子供を置いて逃げる父親というのが、決して笑えるシーンではなく、また当然自分はこんなことをしない、子供を真っ先に守るはずだと真剣に考えるのだけど、要所要所でどこか笑える、そんな映画である。
さっさと謝れば済む話なのだか、この父親は記憶が途切れているのか頑なに逃げたことを認めない。レビューの中では恐怖のあまり父親の記憶は差し替えられているとする見方もあるが、映画をよく見るとそうではない。
この父親は単に自分が逃げたことを認めたくないだけなのだ。
ちゃんと自分が逃げたことを自覚しているシーンがある。
二度目に妻に問い詰められるシーンで、決定打となる雪崩発生時の動画を見せられるシーンだ。動画を見せられる直前、父親は「無事だったからいいじゃないか」と言う。これが本音なのだ。そして、動画は直視しない。妻が動画を見ようと言った瞬間、父親の威厳は崩壊し、取り繕うことは不可能。まさにその表情に切り替わった瞬間、こいつやっぱり自覚してたのかと思った。そして父親は動画を再生し始める妻を物凄い形相で睨む。
面白いのは髭面の男が父親をかばうシーンだ。
同性の人間をかばうあまり言ってることが無茶苦茶になっているが、言っている本人がそのことに全く気付いておらず、突然のドローン襲来にビビッているのである。このドローン襲来は映画を見ている方もビクッとするシーンだが、要は雪崩が起きて子供を守ると言っているそこのお前もいざとなったらどうなるか分からんよという警告だと感じた。
仮定の話で話していたはずのカップルが次第に険悪なムードとなるシーンなど男と女のあるあるネタとして十分効いている。この喧嘩の途中でぶつ切りのカットが入り、この喧嘩がそう簡単には収まらないことを物語っている。

歯磨きのシーンも最高に面白い。
最初は家族4人。次は夫と妻。最後は父親一人になり、「クソっ」と叫ぶ。
嘘泣きからの本気泣き、家族の仲を取り繕うための遭難シーンなどすべてのシーンが愛おしく、そしてなぜか笑える。
シリアスなシーンほど笑えるとは、この映画がいかに上質なコメディであるかを物語っている。
最後の蛇足的なバスのシーンだけが、その意味するところに頭を悩ますが、それを考えるのも面白い。

真っ先にバスを降りた妻。
一人バスに残った奔放な女性。
恋人にいいところ見せようとバス下車の指揮をとるも恋人との仲は終わった様子の髭面の男。
娘を父親ではなく髭面の男に抱っこさせる母親。
タバコを息子の前で初めて吸う父親。

一筋縄ではいかない人々の構図が浮き彫りになり、これはもう明らかにハッピーエンドではない。私には、4人家族の崩壊すら感じてしまえるラストだった。

あとは、やはりヴィヴァルディの音楽が効果的すぎる。
もう、これに尽きる。
冬なのに「夏」というチョイス。しかし、曲のシリアスさが、映画のシリアスさに直結しており、何か人間の逃れられない根源的なテーマを思わせ、凄く重いシーンになるはずなのに、逆に少し滑稽に感じられる絶妙なバランスが心地よい。
どうしてこんなことが可能なのか分からないが、映画として大成功しているのは間違いない。
私の生涯ベスト映画にノミネートされた。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 笑える
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