リゾート気分で寓意を楽しむ映画
- per***** さん
- 2020年4月25日 2時55分
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アルプスでリッチなスキーリゾートを楽しんでる気分にさせてくれるホームドラマ。この映画は監督の意図は別にして、込められた寓意を人それぞれに推測して楽しむ作品ではないでしょうか。以下、私の感じた事を書きます。
●「人間は所詮動物であり、生命の危険にさらされると本能的に自分の命を守る行動に出る。男も女も」
人間は動物にすぎないという主張は、会食の席で髭男マッツが直接語ります。またこの映画には排泄シーンが3回出てきますが、これも威厳だとか言っても結局人間は排泄という汚い行為をしないと生きていけない動物だと暗示してると思います。そして例の雪崩でトマスは我先にと逃げ出しますが、それを非難する妻とても危険なバスを降りる際、子供を置いて真っ先に逃げてしまいます。
●「許しがなければ人間関係は長続きしない。男も女も」
無事だったからいいじゃないかと言う夫に対し、妻はネチネチと責め続け夫婦関係にヒビが入ります。同様に、仮定の話だからいいじゃないと言う恋人に対し、髭男はネチネチと食い下がり、結果、恋愛関係は破綻します。
●「保守的な考えの持ち主である妻は、表面上の威厳を重視する」
家族全員の前で大泣きし威厳崩壊してしまったトマスでしたが、翌日遭難した妻を独りで救出し父親としての面目を取り戻します。しかしそれが恐らく妻の計画だった事は、わざわざお姫様抱っこされて帰って来た事や、ひとしきり無事を喜んだあと妻がそそくさとスキー板を取りに戻った事でも分かります。
●「人間の威厳など所詮もろく、はかない幻想である」
威厳を取り戻したトマスにショッキングな出来事が起こります。あれほど子供を置き去りにしたと非難していた妻が、帰りのバスで同じ事をしたのです。この瞬間トマスは完全に吹っ切れました。妻に非難され威厳喪失に悩んでいた自分が急に馬鹿らしくなって来ました。昨日見た、酒を飲んで暴れる奔放な若者集団が頭をよぎります。「よし、もう取り繕う必要なんてない。いい父親像など今日限りでやめだ!」そう決心したトマスは、家族の為にやめていた煙草を再び喫い始めます。下山を始めたとき最後尾だったトマスは、いつしか集団の先頭に立って歩いています。その顔は威厳の呪縛から解放され、本当の自分を取り戻した自信に満ち溢れていました。
一方、下車の際リーダーシップを発揮して威厳を見せたマッツでしたが、恋人には相変わらず振り向いてもらえません。しかしバスの外でその行為を見ていた威厳信者のエバだけは、マッツを頼り自分の娘を託すのでした。
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