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ジミー、野を駆ける伝説 (2014)

JIMMY'S HALL

監督
ケン・ローチ
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  • みたログ 175

3.54 / 評価:106件

アイルランドの“松下村塾”は…

  • bakeneko さん
  • 2015年1月26日 18時23分
  • 閲覧数 674
  • 役立ち度 9
    • 総合評価
    • ★★★★★

「麦の穂を揺らす風」のラストで痛写された“融和派と主戦派に分裂したアイルランド独立運動”の10年後を描いた秀作であります。実在の共産主義者で独立派のリーダー:ジェームス(ジミー)・グラルトンのアメリカからの帰郷と故郷レイトリム村民のための生活向上への活動の行方を、啓蒙活動の拠点である“集会所:Hall”の存在を格にして描いた映画で、当時のアイルランドの混迷している状況を、片田舎の住民の衝突で浮き彫りにしていきます。

久々に“辛口&社会派”のケン・ローチが完全復活した傑作で、1930年代のアイルランドの“様々な派閥の勢力が乱立していた状況”を分かり易く説明しつつ、信念を貫こうとする主人公と旧知の仲間の奮闘に“人間の自由への渇望と不屈の精神”を見せてくれます。
主人公側である:労働者&下層階の待遇改善や、生活&文化活動の自主性を要求する-イギリスに対してより一層の独立性を求める一派と、
敵対勢力である:現状である自分たちのアイルランド社会での特権状況&支配権を維持するために-イギリスの政治下にある現状を維持して、労働者の人権と自由を限定しようとする支配者層
-の衝突が描かれますが、主人公達労働者仲間のみならず、敵勢力である右翼派やカトリック教会までその理屈と行動原理を明察に示して、両者を単純な善悪の色分けにせずに“どちらもしっかりした理想と信念を持った人々”として掘り下げています。

特にカトリック協会側の論理が分かり易く語られていて、老頑な神父の理屈と信念を持った“敵役ぶり”と、その戦法の現実的ないやらしさは「ファニーとアレキサンデル」以来久々の“悪役神父”の脅威で観客の血圧を上げてくれます。

右派、左派、IRA,カトリック、公爵などの旧支配者層、そしてイギリス政府らの思惑が衝突していたアイルランドの困難期を見せながら、自身の信念に従って生きた主人公とその仲間達を通して“不屈のアイリッシュ気質”を謳い上げた作品で、アイルランドの風景も自然光で映し出されていますし、当時流行のアメリカンジャズミュージックに加えてアイリッシュ音楽&ダンスもふんだんに盛り込まれています。

そして、過酷な状況での迫害されていく主人公達を描きながらも、ユーモア&情緒豊かな人間性の発露&純粋な恋慕…といった瑞々しい情感も湛えている豊かな作品で、追う側の警官達と母親との遣り取りの“人間の本質的な優しさ”でほっとさせる演出は流石であります。

「麦の穂を揺らす風」で描かれた20世紀アイルランド独立史のその後を、一人の主人公の信念を格にして、アイリッシュ風味豊かに謳い上げた作品で、この地方の人たちはどんな時でもユーモアとお茶を飲むことを欠かさないことも分かりますよ!
ねたばれ?
1, カトリック教会の共産主義への忌避反応は強烈なものがあって、20世紀前半は共産主義者やユダヤ教徒への攻撃を支援するためにファシストと蜜月関係にありました(2次大戦末期に多くのナチス戦犯がイタリア:カトリック教会経由で南米に逃亡したことは有名であります)。
2, 主人公の母親が巡回図書館で貸し出していた書物は-宝島:スティーブンソン(スコットランド)やイエーツ(アイルランド)など、非イングランド系作家のものばかりです。
3, ロンドンの下町訛りやイギリスの上流階級アクセントと異なり、本映画のアイルランドの片田舎の人々は驚くほど“米語(東海岸アクセント)”に近い発音で話していることにも注聴!(-アメリカ東海岸地方で英語を話していたのはアイルランド人移民が多数派だったのね!)
4, アイルランドの鎌ってねじ曲がっているんだ~

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