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ジミー、野を駆ける伝説 (2014)

JIMMY'S HALL

監督
ケン・ローチ
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  • みたログ 175

3.54 / 評価:106件

『麦の穂をゆらす風』の10年後。

  • じゃむとまるこ さん
  • 2015年1月31日 23時47分
  • 閲覧数 1235
  • 役立ち度 13
    • 総合評価
    • ★★★★★

この映画は少々のアイルランドの歴史の予習が必要かもしれない。
1920年代のアイルランド内戦、あくまでも英国からの独立を主張する勢力、英国統治の自由国として中途半端な妥協を選ぶ勢力との争い、同じ国民、親子兄弟であっても戦うしかない悲惨、それを描いたのが『麦の穂をゆらす風』。
そんな時代の10年後、1932年アメリカから一人の男が帰ってきた。

ジミー・クラルトン(バリー・ウォード)は実在の人物、英雄でも何でもない市井の人の一人だが、自分が正しいと思う道を生きることを選んだ人物だ。
この時代、社会の不平等を怒り、他人のために心を痛め、その権利を守ろうとする、そして、自分が感じるのと同じように他人にも、本を読み、音楽を奏で、ダンスをする、そんな楽しさを知ってほしいと願い、Hallを作る。それがカトリックの強力な支配下では不穏分子として、国外追放になったのだろう、台頭する共産主義への怯えもあったようだ。

10年後の社会はほとんど何も変わっていなかった、母との平穏な生活を望んでいたジミーだが、人は死んだように生きてはならない、自分たちの生活や未来を手に入れるんだとの人々の思いに、Hall再開を決意する。
そのHallはかつてと同じ抑圧された人々の心の解放の場となる。

これは特殊な人の話ではない、人は誰でもジミーになれる、彼は政治闘争をやっているわけではない、誰でもが幸せになる権利と自由があると言っているのだが、時代は再び彼の存在を許さない。

この映画を観て感じたのは、日本は豊かな時代が長すぎて、考えることをやめてしまった人たちが住む国なんだなぁ、ということです。
何も見えない、聞こえない、身の丈に合った狭い思考しかない。
問題があっても自己主張する前に諦める。
そして何の疑問も感じないで自己責任論などを言い弱者に対する温かさもない、それはなぜかって、愛よりも憎しみの方が多いから。
これが今増えている日本人像なのではないでしょうか。
優しくない。

ジミーはかつてと同じように国外追放となるが、その後を追う多くの若者に彼の精神が受け継がれ、未来に希望を感じさせる映画になっている。

今、日本に必要なのはジミーのような私利のない高潔な精神の政治家であり、そこに未来を感じ共鳴する若者なのだと思う、何をやっても駄目だと諦めていては死んだように生きるしかない。

「それは理想だけどね」というのはたやすい、しかし理想を忘れては何ごともなしえないのだ、とこの映画は語っていると思う。

といって政治的な映画ではない、あくまでも人間らしく生きたいと希求する人々の事実に基づいたフィクションであり、久々にケン・ローチ色全開の映画です。


心に残った台詞。

「あなたの心には愛よりも憎しみの方が多い」
「あなたは、跪く者しか愛さない」


主演のバリー・ウォードは地味ですが、同じアイルランド俳優クリス・オダウド(ファンです)に似ていて、いかにもアイルランドという印象を受けます、有名俳優でないところが良い。

アイルランドの緑したたる自然が素晴らしい、Jimmy's Hallの佇まいも良い。

そして生命感あふれるアイリッシュ音楽が素晴らしい。


自由の重さをあらためて考えさせられる映画です。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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