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ジミー、野を駆ける伝説 (2014)

JIMMY'S HALL

監督
ケン・ローチ
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3.54 / 評価:106件

あなたの善き教師、善きホール(映画館)は?

  • GODOFGOD さん
  • 2015年4月4日 8時41分
  • 閲覧数 1030
  • 役立ち度 8
    • 総合評価
    • ★★★★★

Jimmy's Hall  (2014:イギリス・アイルランド・フランス) 
監督:ケン・ローチ 
脚本:ポール・ラヴァティ 
主演:バリー・ウォード 



モノクロの記録映像、自由の女神、歌とダンス、世界恐慌、失業・・
モノクロから、カラーへ <Jimmy's Hall>(原題)
ファーストシーンからこのタイトルバックまでが、本作の【テーマ】である。


―アイルランドの活動家ジミー・グラルトンと村のホール(集会所)を巡る物語―
このように説明され、これまでの歴史背景も補足される。
親切な導入部である。

《予備情報》
1919~1921年:アイルランド独立戦争。【英愛条約】締結。
北部6州は英国統治の北アイルランドとして残り、
南部26州による【アイルランド自由国】が成立。
1922年:この条約の賛否を巡り【アイルランド内戦】勃発!

○アイルランド自由国政府軍 (条約賛成派):指導者マイケル・コリンズ
               X 
●アイルランド共和軍・IRA (条約反対派):指導者リーアム・リンチ、(エイモン・デ・ヴァレラ)

血で血を洗う暗殺合戦、数千人規模の反対派逮捕の末、内戦終結。
賛成派の勝利。

内戦終結から10年、
デ・ヴァレラ議長新政権から1ヶ月後・・・
ここからが物語の本編となる。


《プロット》
1932年、アイルランド・リートリム南部、元活動家のジミー・グラルトン(バリー・ウォード)は、年老いた母親のもとへ10年ぶりにアメリカから帰郷した。荒れてしまった畑の仕事と、母との平穏な生活の為に。
村の仲間たちに歓迎されるが、閉鎖された【ホール(集会所)】の再開活動を彼らに求められる。
それはかつてジミー自身が建設したホール。芸術を学び、歌や踊りを楽しむ人々の集いの場所。
ジミーはホールの再開を行うが、教会の教えに反する行為として彼らは監視と謀略の的となっていった。
10年前のように・・・


《感想》
アヴァンタイトルでテーマが出ているので、
何がネタバレで何が歴史的背景かなんてあまり関係ないのだが、
【故郷を離れ都会に移住し、帰郷したらホール(集いの場)が閉鎖。
人権と芸術運動の再興のために村民が蜂起する】

特にアイルランドの歴史なんて知る必要はない。

日本人でも誰でも理解できる【テーマ】である。
物語は、実在の人物ジミー・グラルトンの伝記物風だが、根幹のテーマは極めて普遍的だ。
言い方を変えれば、“今伝えるべき現実的なテーマに合う実話の題材を見つけた” ということだろう。

タイトルは『ジミーのホール』であり、「ジミー・グラルトン」ではない。
物語背景が、政治・歴史をなぞっていても、
作品テーマの本質はいかに現実に結び付いているかである。


劇中の「ホール」のことを、
ずっと “映画館” という言葉に置き換えて観ていた。
なぜなら、ケン・ローチは政治活動家である前に映画監督だから。
引退を宣言した彼の集大成ともいうべき本作は
名作『ニュー・シネマ・パラダイス』に匹敵する映画愛に溢れた作品だと思った。

ジミーは亡命で渡米後、帰郷して最期はアメリカに強制送還された。
ジミー個人の物語は【芸術運動】を復活させるテーマの肉付けであり、
偉人の美談という凡庸な内容ではない。


【映画興行界】の凋落・・・
ケン・ローチはそれを嘆いての引退なのかなと。(イーストウッドも頑張ってるんだ!まだやれるよ!)

皆さんの周りで長年続いた映画館が閉館してませんか?
47都道府県すべてに当てはまるのでは?
テレビの登場による観客の映画館離れ、録画再生機器の普及、
シネコンブーム、そしてデジタル化によるフィルムの終焉、
原因は様々ですが、昔ながらの映画館は次々と消えていってしまいました。
最近は単館系 (ミニシアター) も次々閉館。
リニューアルで立ち直った映画館もいくつか在りますが、
企業複合体の宣伝と搾取が、観客の意思、芸術性や倫理性よりも優先されているのが実態。

ジミーの演説を引用するなら、
「土地を奪われ、共通の利益と信仰という嘘、幻想と搾取の強欲なシステムに踊らされている」

無知と迷信の助長、大企業フランチャイズのガチャ商法みたいな映画興行ビジネス。
(ガチャ? →ハズレ→課金→ハズレ→課金ってこと)

けれども、そんな時代の中でも活動家や自由を求める人は存在しているわけで、
本作はそういった人々への呼び掛けのように思えてならない。


余談で私事だが、自分にとってのジミー・グラルトンは、小学校時代の社会の先生。
観た映画の感想から日常の体験談など教科書にはないことを沢山教えてくれた。
本当の社会は教科書の中ではなく、目の前にあるということを。

そして、自分にとっての善きホール(映画館)は、かつては大衆映画館だったが閉館してしまい、後に熱心な復興運動と市民や民間企業のカンパでミニシアターとして甦った地方の小さなホール(映画館)。
そこで、この映画を2回観た。

詳細評価

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