ここから本文です

ナイトクローラー (2014)

NIGHTCRAWLER

監督
ダン・ギルロイ
  • みたいムービー 1,443
  • みたログ 3,483

3.84 / 評価:2,428件

レネ・ルッソの凍てつくほどの切なさ

  • yab***** さん
  • 2016年9月24日 17時56分
  • 閲覧数 1702
  • 役立ち度 8
    • 総合評価
    • ★★★★★

 最近読んだ適菜収氏の『ミシマの警告』に、近代大衆社会において、共同体が破壊されていく中、社会から「悪」を排泄する能力が失われ、その構造のなさが、大衆を扇動する人間を創出する温床になり、サイコパス的な全体主義が拡大していく、という内容のことが書かれていた。
 この本ではサイコパスの特徴として、口達者で皮相的、自己中心で傲慢、良心の呵責や罪悪感の欠如、ずるく、ごまかしがうまい、行動をコントロールすることが苦手、責任感の欠如を挙げている。そして、サイコパス的人間は、精神障害者ではなく責任能力を持つ人間であると結んでいる。
 
この作品が怖いのは、パパラッチに傾倒している一人のサイコパス的人間という事象の一断面を切り取っているに過ぎないと思わせながら、実はテレビ局や警察等権力の側の人間が、彼に惑わされている隙に、全体主義的悪が、あたかもあたりまえのごとく市民権を得ていく状況にある。
 彼はスクープのためには、事故現場、殺人現場の死者たちの人権を無視し、救助するために現場に一目散に駆けつけたんだと嘯き、一方で、「人の破滅の瞬間に僕は顔を出す」と豪語する男である。
 
サイコパスが撒き散らす全体主義の一番の恐怖は、人を人と思っていないことである。自分をひきたてる道具に過ぎないという考え方である。事故に遭って死にたいとは思っていなかった、銃で殺されるなんて、その直前まで微塵も思っていなかった、といった人間の切々とした感情をすべて無のものにし、彼は孤高の悪の城を築き上げる。

 彼は、仕事一筋の深夜の報道番組の中年女性TVディレクターの、独身で仕事中毒者がゆえの心の隙を巧みに利用する。
 深夜番組という日陰者の劣等感や、衝撃的映像を提供しないといつでも降板させられるという危機感、不安感や、女の部分は表に出さねど、確実にあるという現実感に巧みに入り込んでいく彼。住む世界が違う一回り年下の男に絶対騙されないと思っている僕ら視聴者の期待は、見事に裏切られる。そこがとても怖い。
 その怖さは、罰せられる人間が、罰せられないで、警察の網の目をくぐり、責任能力を持ったサイコパスの集団を作っていく、ということで頂点に達する。

 現代が抱える全体主義的不条理を、そのギョロ目の表情の微妙な変化で演じきったギレンホールも怖いが、視聴率競争の中で疲弊していく女性TVディレクターとして、人間の良心が崩れ去っていく様を見事に演じきった、 レネ・ルッソはもっと怖くて、凍てつくほど切ない。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 不気味
  • 恐怖
  • 切ない
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ