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ナイトクローラー (2014)

NIGHTCRAWLER

監督
ダン・ギルロイ
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  • みたログ 3,877

3.83 / 評価:2,524件

サイコパスの実質を描いた唯一の映画

  • bar***** さん
  • 2019年3月20日 0時30分
  • 閲覧数 1598
  • 役立ち度 6
    • 総合評価
    • ★★★★★

ナイトクローラー。私はすごくおもしろかったです。

まず緊張感がすごいですよね。それにルーのキャラクターもいいです。Wikiを見ると「サイコパス」という記述があり、私自身サイコパスってこういう人なんだと初めて知りました。俗語でサイコパスっていうと、なんていったらいいんだろ、乱暴になるのに多少躊躇のない人とか、犯罪欲求を秘めている人ってニュアンスでしたが、Wikiに結構詳細な記述があって、いくつか周りに当てはまる人がいて、人間って色々なんだなとあらためて思いました。ふざけて使うこともありましたが、結構重い言葉ですよね。

この映画はテレビ局などに高値で映像を売る、パパラッチが主人公です。例えば大事故などが起きると、いち早く現場に駆けつけて(無線で警察の会話を聞き取る)、ショッキングな映像を撮りまくる。それをテレビ局にもっていって売る。そういうお仕事の人です。

よくネットを巡回していると、「マスゴミ」なんていうワードを目にしますけど、報道っていうのも色々なんだなとあらためて思いました。例えば、我々は簡単にマスコミの倫理性を批判しますけど、ようはそれには需要があるから、簡単に報道されたものに食いついて信じ込んでしまう人がいるから、マスコミは力を持っている、そして倫理から外れたことをするようになるんですね。その構造にあらためて気づかされました。報道というのは現代の人間の象徴だというのを本で読んだことがあります。現代の人々は報道を求めている。それは多くの場合、知り合いとの会話に遅れないようにするためです。そうやって「情報」によって頭が占められていくのが現代人だということです。

主人公のルーは誰にも撮れないような映像を手に入れるために、非道なことをします。事故現場にいち早く駆け付けるために信号無視、危険運転は当たり前、警察よりも早く着けば、倒れている人をそっちのけで一心不乱にカメラを回す。最低なことに自分が望む構図や物語にするために、証拠品を動かしたり、倒れている人を引きずったりします。罪悪感というものがないのです。でも、こういう人って結構いますよね。「罪悪感」って実は結構難しいワードで、それって社会通念そのものを指すこともありますが、私はその人個人に襲い掛かってくる恐怖や良心の事だと思っています。ですがそれが欠如した人々を私はよく見ます。そしてそれはよく肯定されうるのです。例えばブラック企業やハラスメント行為、その内部環境には、よくこういった「罪悪感」の欠如を自然なことと捉える風潮があります。つまりある人物の欲望を満たす行為や、あるいは社の利益のためだとかいう免罪符があるんですね。ですので私は「常識」とか「道徳心」という言葉に意味はなくて、それはいつでも覆されてしまうものだと思います。ですがそれは社会的構造の話で、この映画の主人公のような「サイコパス」とは全く位相を異にする話かもしれませんね。

ルーは学歴もなく職もない、どこか乾いた人物として登場します。平気で物を盗み、嘘をつき、非常に利己的で浅ましい男だと分かりますが、何故か、胸に秘めた情熱のようなものをかいま見せる、不思議で美しい男だという印象があります。彼はふと「ナイトクローラー」というパパラッチと出会い、その内に秘めたる情熱が燃えてくるのを感じます。彼はカメラと無線機を手に入れ、独学でパパラッチとして仕事を成功させます。その後はテレビ番組のディレクターと懇意になり、次々と衝撃の映像を撮っていきます。この時思うのは、ルーはありふれたろくでなしから、一気に仕事中毒の危険なやつになってしまったが、その情熱はすさまじく見る者を圧倒するということ。単純に金を稼ぎたいわけではなく、ただ彼は芸術家的意欲と、社会的承認の高揚感に夢中になってしまった。そしてそれは現代のビジネス学と一体になって、犯罪的経済機構の一端を担うようになっていくのです。ここはすごくリアルです。経済というのはこういう面があります。冷静に考えたら犯罪だと思うこともいっぱいあります。私は商売人ではないので分かりませんが、商売と倫理性とは、かみ合うことは非常に難しいのではないかとも思います。「まじめにやってはだめ。人間性なんか捨てろ。同情なんか無価値」という風潮がいろいろな場面で感じられます。その恐ろしさを知ってほしかったのではないかとも思います。ルーの会社はまさしくこういった犯罪的企業の極端なものです。自分たちの仕事のためなら、どんな非合法なことでもするでしょう。ついには殺人まで行ってしまうと思います。サイコパスというのは、まさしくそういう人たちなのかもしれません。それが恐ろしい。しかし彼の行動力、一直線に悪に走る冷徹な思考、平気な顔をしてつく嘘には、何か魅力があります。それを表現できたのはこの映画だけです。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 恐怖
  • 知的
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