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天空の蜂 (2015)

監督
堤幸彦
  • みたいムービー 858
  • みたログ 5,720

3.41 / 評価:4570件

無関心という罪

  • yuk******** さん
  • 2015年9月19日 17時58分
  • 閲覧数 4590
  • 役立ち度 49
    • 総合評価
    • ★★★★★

原作がしっかりしているので、映画でどういう扱いになっているのか、正直不安でした。
かなりドラマティックに脚色されて、娯楽性が強まっていて、原作の主題がやや弱くなった感は否めませんが、まずは一人でも多くの人に劇場に足を運んでもらって、見てもらわないと話は始まらないので、何よりおもしろいことは重要な要素だと思います。
その意味で娯楽作品として見ても、十分に面白いと思います。

3.11はおろか、9.11すら起こっていなかった当時にこの作品が書かれたという事実にまず驚きます。9.11を経験した我々は、こういう事件がおこる可能性がセロではないと知っています。
そして、3.11で原発の安全神話は完全に崩壊しました。
原発がなくても日本社会は何も困らず正常に機能することも証明されました。
それでも政府は原発を再稼働しました。
今この映画が公開される意味はそこにあると思います。

原作中にヘリコプターの開発者と原発の技術者二人の会話があります。
技術者は常に最大の努力を払っているが、飛行機の危険性をセロにはできない。乗客はそれを承知の上で、飛行機という交通手段を選ぶ。しかし、飛行機は嫌なら乗らなくてもいい。問題はそこだというような内容です。
これは真犯人のラストメッセージの内容につながる非常に重要な問題なので、この部分は入れてほしかったと思います。
また、原作には何度か出てきた、犯罪を許すことはできないが、犯人の言ってることにも一理あるというセリフがなくなっているのも残念な気がしました。

この作品は反原発がテーマではありません。
今我々は、危険性がゼロではないことを承知の上で原発というエネルギーを利用しようとしている、この事実をどう考えるのか。
原発にも勿論メリットはある。デメリットばかりじゃない。
メリット、デメリット両方を様々な立場から示して、国民一人一人がそのことの意味を自分で考えてその上で、危険を覚悟でメリットを取るのか、エネルギー危機がくるかもしれないことを承知の上で安全策を取るのか、覚悟を持って決断しなくてはならないと訴えているのです。
一番悪いのは無関心でいることだと。

そういう意味で、個人的には犠牲者もけが人も出ない、犯人の大立ち回りもない、原作の冷静で知的なトーンの方が好きです。
特に、綾野剛扮する実行犯の大立ち回りは、アクションもうまい俳優だから娯楽作として重要な見どころであるのは認めつつも、背中で演技できる人だからこそ、原作のように陰から事件の推移を見守りつつ、ひそかにほくそ笑んでいる方が不気味でよかったんじゃないかと思います。

そして、ラストシーンは完全に蛇足で、真犯人のラストメッセージで終わらないと、この作品のテーマそのものの印象が弱くなってしまうと思います。

原作ファンにはやや不満に感じる部分もありますが、見ごたえ十分な内容であり、原作者のメッセージの核心は伝わっていると思います。
安保法案や原発再稼働。
反対派の動きが活発になっている今だからこそ、賛成するにせよ、反対するにせよ、自分の意見というものを持つことの重要性を認識させてくれる作品だと思います。

詳細評価

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