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ウォーキング・ヒルズの黄金伝説

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4.0

ネタバレ地味ながら捨てがたい味

ジョン・スタージェス監督が初期に手掛けたノワールタッチの現代版西部劇。 アメリカとの国境にあるメキシコの町メヒカリの酒場でポーカーに興じていた男たちが、砂漠で旧式のワゴンの車輪に足を取られたと語る若者ジョニーの話を聞いて、100年近くも前に砂漠で行方不明になった幌馬車隊とともに消えた金の延べ棒の伝説が事実であったと確信し、皆で砂漠へ黄金探しに出かけるという壮大なロマンに満ちた物語でありながら、砂漠に到着してからは閉塞感を感じる雰囲気が漂います。 町へ戻ろうとする者があっても、黄金の話がその者から漏れて大挙して町の人々が押し寄せるのを恐れて、誰も砂漠から出さないよう互いに牽制し合うというシチュエーションを作っているからで、広大な砂漠が閉ざされた空間となるのが面白い。 スタージェス監督は、「ブラボー砦の脱出」でも、先住民に周りを囲まれて窪地から逃げ出せなくなるという自然の中の閉鎖空間を上手く作り出していましたね。男性陣の中に女性(エリノア・パーカー)が1人という状況も似ています。 また、歌手のジョシュ・ホワイトがギターでブルースの弾き語りをしているのがメロウなムードを作り出すのに一役買っていて、冒頭の酒場でも砂漠の中でも、彼の歌が響き渡ると物憂げな気分が漂う雰囲気づくりがなかなか良く出来ています。 ジョン・フォード監督の「幌馬車」や「リオ・グランデの砦」におけるサンズ・オブ・ザ・パイオニアーズの歌唱に匹敵するような効果を上げているだけに、後半、歌わなくなるのがちょっと残念。 男たちの中には、以前ポーカーで揉めた相手を誤って殺してしまった若者シェプ(ウィリアム・ビショップ)と彼を追う探偵フレジー(ジョン・アイアランド)がいて、若き日のアイアランドが後年ほどアクのない演技でフレジーを演じていますが、シェプ以外のスネに傷を持つ者たちが、フレジーが追っているのが自分ではないかと疑心暗鬼になって突発的な行動に走ったりするのも、スリリングな展開になっています。 また、シェプの恋人クリスが男たちの後を追ってきて紅一点の存在になるのですが、このクリス役をシャープなマスクで眼光鋭いクールビューティーのエラ・レインズが演じているので、男たちの中に完全に溶け込んでいて、彼女を巡って男たちの揉め事が起こったりしないのがスタージェス監督の作品らしいところかもしれません。 エラ・レインズは本来の魅力を発揮しきれていない感じがするものの、良心的な立場に立って行動してくれるので好感度は高いです。 さらに、クリスがシェプに心を寄せる前に付き合っていたジムもこの男たちの中にいて、演じているのがランドルフ・スコット。 スコットは、トップビリングなのですが、本作では他のスコット作品とは一味違った存在で、砂漠にお産が近い雌馬を連れてきて、黄金探しよりも馬の出産のことで気を揉んでいるというような我が道をゆくタイプの男を演じています。 嫉妬心に駆られて殴り合いをするなんていうこともなく、同じ空間に元カレと今カレが一緒にいながら、静かに時が流れていくという不思議。 スコットは、集団の中でまとめ役になったり、正義感を発揮して活躍したりすることのない傍観者的な立ち位置にいて、型にはまっていない役柄なのが新鮮な印象です。 脇で光る役が多いエドガー・ブキャナンやアーサー・ケネディも出ていて、ブキャナンは持ち味を発揮していますが、ケネディはちょっと存在感が薄い役でした。 終盤には、戦前の「スエズ」を思い起こさせるような猛烈な砂嵐が襲ってくるのが見もので、砂嵐が去った後の『walking hills』に忽然と姿を現すものと、黄金の行方についてのユーモアのあるオチが個人的には気に入りました。 登場人物の心理描写が弱いという点はあるものの、地味ながら心に残る作品になっています。

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