別に虐殺の文法を使わなくても
- ridermask_stronger さん
- 2018年9月15日 21時14分
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ジョン・ポールは、虐殺の文法という、人間の脳に生来的に備わる残虐性を引き出す言語パターンを発見し、それを用いて、発展途上国などで内戦を引き起こしている。
が、内戦の扇動は、虐殺の文法などというSF的な設定に頼らなくても、現実の世界でいくらでも行われている。アフリカの大地には、民族や地形を無視して一直線の国境が引かれ民族は分断し、中東では石油利権を巡って各国が宗教対立を煽って自国に都合の良い政権を作ろうと裏で手を引いている。
虐殺の文法などというSF的アイテムを用いなくても、従来のテクノロジーでストーリーは十分に成立する。
また、どうしても、クラヴィスがアメリカで虐殺の文法をばらまく理由がよくわからない。
私なりに想像すると・・・
ジョン・ポールは虐殺の文法を発見したが、研究過程で、当然のごとく自らが大量に虐殺の文法を聞いていることになる。そして、自らが虐殺の文法の影響を受けて虐殺を開始する。そこに特別な動機や大義はない。単に人間の生来的な脳機能が発現しただけだからだ。
途上国をターゲットにしたのは、単に仕事の都合で潜り込みやすかったからに過ぎない。
そして、ジョン・ポールを追うクラヴィスも、彼と会話する中で、すでに虐殺の文法の効果を受けてしまっていた。ジョン・ポールが残した理論を用いて、クラヴィスは虐殺声明を準備し、最も効果的である自身の公聴会で声明を読み、世界を虐殺へと導く・・・
と、こんな感じで、大義や、個人の動機・罪悪感、そんなものは関係なく、単に、虐殺の文法という技術が本人たちの気づかぬまま、本人たちを操っていた、という話のほうが、SF的にはすっきりする。
原作は読んでいないが、どうなんでしょう?
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