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真夜中のゆりかご
2015年5月15日公開

真夜中のゆりかご

EN CHANCE TIL/A SECOND CHANCE

1022015年5月15日公開

koko

3.0

共感できずとも理解をすれば良作となり得る

主人公の行動に共感できない、と匙を投げるのは勿体ない。 そもそも、冒頭出てくるような夫婦をほとんどの人間は目の当たりにする機会がない。ましてや、糞便まみれでクローゼットに放置された赤子を観たことがあるか?ないでしょう。 しかし、世の中には信じられないようなクズ人間、我々の常識や良識なんて1ミリも持ち合わせていない人間は実際に存在していて、主人公は刑事と言う職業柄こういう光景を日常的に目に入れている人間。 そんな理不尽さと戦う彼が、突然愛する我が子を失い妻に「自死」という武器を見せて脅迫されたとき、どんな行動に出るか。 「共感できないから意味わからない」の一言で済ませるのはあまりに陳腐で滑稽だ。 この映画の構成は見事だと思う。 主人公が無理やり自分の行為の中に「正義」を見出したものの、 実際は「良識ある愛情深い母親」だと思っていた我が妻の「乳児虐待の事実」と、 クズだと信じて疑わなかったジャンキー女の中に見えた「ひとかけらの良識と深い愛情」とを対比させる結果に繋がっていくのだから。 誰よりも苦しいのは主人公だが、皆が苦しみを抱えている。 我が子を死に至らしめた妻は悪人だったのか? そうは思わない。 あんな人里離れた家に赤ん坊と2人きり、娘にも孫にも関心のない両親は会いにも来ない。 思いつめてしまった妻を断罪できる程我々は偉いのか?と問いたい。 人は己が受けた愛情をそのまま人に伝えていくと言われている。 ジャンキーだが必死で赤ん坊を生かそうとしていた母親、彼女もまた愛に飢えていたのだろう。 私は、主人公の行動に共感は大変愚かであると思うが、理解は出来る。 そして、主人公の妻の気持ちもジャンキーな母親の気持ちも理解できる。 そういう気持ちを持てれば、他人のほんの一場面だけを切り取り、「赤ん坊の泣き声がうるさい」だの、「あの親は躾がなっていない」だの、そういう荒んだ気持ちはだいぶ少なくなると思う、きっと世の中が少しだけ優しくなる。 地味な映画ではあるが、自分も一人の母親として今一度、我が子だけでなく世の中の子ども達に目を向けていこうと決心させてくれた映画でした。

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