解説
『マトリックス』シリーズなどのキアヌ・リーヴスがすご腕の元ヒットマンを演じたアクション。ロシアン・マフィアに平穏な日々を壊された元暗殺者が、壮絶な復讐(ふくしゅう)に乗り出していく。メガホンを取るのは、『マトリックス』シリーズなどのスタントを務めてきたチャド・スタエルスキ。『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』などのウィレム・デフォー、『ヘラクレス』などのイアン・マクシェーンら、実力派が共演する。全編を貫くダークでスタイリッシュなビジュアルに加え、カンフーと銃撃戦を融合させた迫力のアクションも必見。
シネマトゥデイ (外部リンク)
あらすじ
伝説的な暗殺者として裏社会にその名をとどろかせるも、殺しの仕事から手を引いたジョン・ウィック(キアヌ・リーヴス)。暴力から遠く慣れた毎日に安らぎを覚えていた彼だったが、それをロシアン・マフィアによって奪われる。怒りと憎しみに支配された彼は、封印していた殺しのスキルをよみがえらせ、ロシアン・マフィアへのリベンジを果たすことを決意し……。
シネマトゥデイ (外部リンク)
映画レポート

「ジョン・ウィック」アクションのキアヌが完全復活! 新たな伝説の幕開けに刮目せよ
キアヌ・リーブスと言えば、出世作のノンストップアクション「スピード」(94)と、SFアクションの金字塔的トリロジー「マトリックス」(99~03)。活劇の新潮流をも先導したこれら傑作群に恵まれたものの、近年はパッとしなかったキアヌが、ようやく本領を発揮できる作品に巡りあった。
今回の役どころは、引退したスゴ腕の殺し屋ジョン・ウィック。死別した妻から贈られた子犬との穏やかな暮らしで喪失感を癒す導入部は、私生活の「いい人」ぶりがよく知られるキアヌにぴったりだ。しかし、ロシアンマフィアのボスのバカ息子が、ジョンの愛車を奪うついでに愛犬も殺してしまったからさあ大変。元殺し屋は封印していた闘争本能を解き放ち、マフィア相手に壮絶な復讐を繰り広げていく。
製作陣には、「マトリックス」でキアヌのスタントダブルを務め、これが初監督作品となるチャド・スタエルスキほか、熟練のアクション職人が集結。銃撃と格闘技を組み合わせ、新銃術「ガンフー」を開発した。キアヌは長期の訓練と綿密なリハーサルでこれをマスターし、撮影に臨んだ。
こうして完成したアクション場面では、ジョンが流れるような動きで次々に敵を撃ち、接近戦で殴り倒すシークエンスを、少なめのカット割りでじっくりと提示。CGやワイヤーで誇張したり、目まぐるしいほどカットを割ってスピード感を盛ったりする派手なアクション大作とは一線を画す演出で、練り上げられた型の美しさとリアルな身体の躍動で魅せる“新時代の本格アクション”の趣さえ漂う。
特筆すべきもう1つの見どころは、雰囲気たっぷりに描写される裏稼業のコミュニティー。殺し屋たちが集う中立地帯のホテルがあり、電話一本で駆けつけて死体を片付ける「掃除屋」たちがいて、仕事の報酬は専用の金貨で支払われる。プロ同士の信頼関係がクールに表現され、ニューヨークの夜の街並みとともにダークな世界観の構築に大いに貢献した。
全米1位の大ヒットを受け、すでに続編の製作も決定。キアヌの新たな代表作となる「ジョン・ウィック」シリーズの幕開けに立ち会えることを喜びたい。(高森郁哉)
映画.com(外部リンク)
2015年10月15日 更新

「ジョン・ウィック チャプター2」誇り高き"ぼっち"ここにあり。ロケーションやファッションもさらにアップデート
愛犬のビーグル犬"デイジー"の仇を討つために締めて84人を天国に送ったジョン・ウィック。「犬のためかよ!?」とのツッコミもなんのその、作られるべくして作られた待望の続編でも、前作のラストで連れ帰った2代目のペット、ピットブル(名前はまだない)を相棒に、伝説の殺し屋が再起動する。
"ガン・フー"に続いて繰り出される車を武器として扱う人呼んで"カー・フー"では、鋼鉄の車体を自らの肉体の如く巧みに操り、時には車に激突を食らっても事も無げに立ち上がる。ナイフと格闘技を合わせた"ナイ・フー"では、鉄拳と共に刃先が相手の内臓を抉り出す。白眉は、古都ローマの石階段を上から下まで数十段、殺し屋と絡み合いながらの階段落ちシーン。公には、キアヌ・リーヴス本人が95%を演じているとされるスタントシーンの中でも圧巻の場面だ。その間、観客は心地よい疲労感をキアヌと共有していることに気づくはず。不死身の設定とは言え、今なお青年の風貌をキープし続けるキアヌ・リーヴスならではの体感効果だ。
殺しの依頼を断ったが為にロング・アイランドの自宅を爆破されたジョンが、依頼主のイタリアン・マフィア、サンティーノに復讐するため、ニューヨークからローマ、再びニューヨークとロードする続編は、ロケーション・ムービーとしての旨味もたっぷり。5番街に隣接するロックフェラーセンター屋上のカフェから眺める向かいのサックスフィフスアベニュー、ジョンの目線の先に悠然とそびえ立つローマのランドマーク、ヴィットリオ・エマヌエレ公会堂等、旅好きの目にも新鮮なアングルには、ロケハンにも神経を注いだ跡が見て取れる。
ジョンがマフィアの総本山に攻め入る前に、組織の"ガンセラー"を訪れ、"ガンソムリエ"の薦めに従って拳銃をテイスティングした後、テーラーに移動してオーダーするのは、勿論、ファンシーなイタリアン・スーツだ。しかし、そこはさすがに闇社会。ジョンがテーラーに念を押す実践仕様の裏地とは、あくまでスーツのラインを崩さない薄手の防弾チョッキを意味していた。
アクションのスタイルやガジェットの類いは勿論、ロケーションやファッションもさらにアップデートされ、もはやシリーズ化は不可避となった「ジョン・ウィック」。それが新たな「マトリックス」になるのかどうかは分からない。しかし、人気コミックの映画化や既存作のリメイクではなく、勝手知ったる仲間たちと腹を割ってアイディアを出し合い、絞り出した100%オリジナル作品によるアクションシーンへのカムバックは、ハリウッドの主流とは距離を置くキアヌ・リーヴスだからこそなし得たこと。誇り高き"ぼっち"ここにありなのだ。(清藤秀人)
映画.com(外部リンク)
2017年7月6日 更新