既に脳内がピクセルに侵略された人への作品
- har***** さん
- 2015年9月21日 7時19分
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パックマン実写化!!
もはやその事実だけで映画史に名を残す名作と成り得る素質は充分あるけど、あの無味乾燥なゲームをどう表現するかは非常に難しいと思う。ゲームの中の世界をそのまま世界観とするファンタジー形式や、現実世界の人間がゲームの中に放り出されて、パックマンと共に闘う等がいわゆる王道的なSFゲーム映画の骨格になると思う。
この作品では、80年代初期の色々なアーケードゲームの情報を宇宙に送信して、それをエイリアンが実体化して地球に送り返す、という設定にしているけど、パックマンに関しては、もはや退治する対象であり、その発想の柔軟さに感心してしまう。その設定ならば、ゲームのキャラが現実の街を破壊していく爽快感を味わえるし、80年代初期に特化したゲームをテーマにできるし、何より既に大人になっているその年代が楽しめる程度にはファンタジー色を薄めることが出来たと思う。
演出全般に関しては、一々絡めてくるギャグに相性が良ければ最高に楽しめるけど、そのセンスも恐らくアーケド世代に合わせているのかもしれない。完全なコメディなので、SF的緊迫感を感じるべき内容なのに、全くそれを感じなかった点は、もはや必要悪とも言える不満点だろう。ゲームルールを一々説明してくれる点や(ギャグと相性が良ければ)テンポの良さを感じる点は高評価。
音楽は、懐かしのゲームミュージックや効果音はキッチリ再現してあるし、懐メロ洋楽もふんだんに入っている。これもその世代がターゲット。
映像は、ほぼ非の打ち所が無い…というか、あの1メガバイト以下の粗いドット世界を、良くぞここまで忠実に立体化してくれた、と感動してしまうぐらい、期待を超えた内容。現実の物質が攻撃を受けてピクセル化していく描写も斬新で面白かった。
しかし、この映画の評価は決して高くない。ロッテントマト批評も最低に近い。でも、私にとっては最高の作品だと思う。この差はどこから出てくるのだろうか?個人的には、正に「ピクセル」そのものが理由だと思う。「ピクセル」とはドット絵の事であり、あのカクカクとした絵柄なんだけど、当時ゲーセンで脳から変な汁出しながらゲームをやりまくった世代にとっては、いわゆる「パブロフの犬」のような原理で、大人になってもドット絵を見ることで快感を覚えるのだと推測している。私はアーケードでは無いが、ファミコンにハマっていたので、その気持ちが共感できるのである。良く分からないけど、紙に書かれた文字よりもディスプレイの文字の方が集中して読めるし、ドット絵を見ると、なんだか幸せな気分になるのである。
おそらく、この監督も同じような感覚を持っている人と推測する。要するに、私のような人間がターゲットとされている映画であり、逆に言えば、私達のような人間には、この映画が「面白くない」と判断する「脳作用」の感覚が、全く理解できないのである。
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