ここから本文です

ボヴァリー夫人とパン屋 (2014)

GEMMA BOVERY

監督
アンヌ・フォンテーヌ
  • みたいムービー 90
  • みたログ 300

3.50 / 評価:208件

解説

イギリスの絵本作家ポージー・シモンズが、フランスの文豪ギュスターヴ・フローベールの代表作「ボヴァリー夫人」を題材にした著書を実写化。隣に暮らすイギリス人夫人の不倫現場を目にしたパン屋主人が、その動向を見つめる。メガホンを取るのは、『美しい絵の崩壊』などのアンヌ・フォンテーヌ。『危険なプロット』などのファブリス・ルキーニ、『ランナーランナー』などのジェマ・アータートンらが結集する。舞台となるノルマンディーの風景に加え、ユーモラスで官能的な語り口にも注目。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

ノルマンディーにある故郷の村へと戻り、父親が遺(のこ)したパン屋を受け継いだマルタン(ファブリス・ルキーニ)。ノルマンディーを舞台にしたフローベールの小説「ボヴァリー夫人」を読みふけっては退屈な日々を過ごす彼だったが、隣の農場にイギリス人であるチャーリー(ジェイソン・フレミング)とジェマ(ジェマ・アータートン)のボヴァリー夫妻が移り住んでくる。美しいジェマに惹(ひ)かれていく中、マルタンは彼女が年下男性と密会するのを目撃。やがて、「ボヴァリー夫人」を地でゆくジェマの行動に気が気でなくなっていく。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2014 - Albertine Productions - Cine - @ - Gaumont - Cinefrance 1888 - France 2 Cinema - British Film Institute
(C)2014 - Albertine Productions - Cine - @ - Gaumont - Cinefrance 1888 - France 2 Cinema - British Film Institute

「ボヴァリー夫人とパン屋」英仏文化の違いをユーモラスに描いた知的官能映画の決定打

 ギュスターヴ・フローベールの有名な小説を現代に移し替え、ヒロインを、フランスに暮らす英国人という設定にして描いたポージー・シモンズのコミックを、アンヌ・フォンテーヌ(「ココ・アヴァン・シャネル」)がウィットたっぷりに映画化した。イギリス女性にフランス男がめろめろになるとは、世界一コケットと言われているフランス女性(とフローベール)の猛反発をくらいそうだが、これもピーター・メイルに端を発したフランス好きイギリス人の増加に着想を得たものだろうか。ともあれ、英仏文化の違いを知的なスパイスも効かせ、官能的かつユーモラスに料理した監督の手腕が光る。

 たとえば、ボヴァリー夫人(ジェマ・アータートン)にパン屋のマルタン(ファブリス・ルキーニ)が一目惚れをする瞬間。夫とともにパン屋を訪れた彼女は、目を閉じて香ばしいパンの香りを胸一杯に吸い込みながら、「あ~、これがフランスよ」と夫に告げる。そんなエキゾチックな行為に、マルタンは驚きながらもたちまち、密かなる妄想の虜になってしまう。職人としてのプライドもくすぐられ、彼は夫人にパン作りのいろはを説くことになる。パン粉をふたりでこねるシーンの、そこはかとない官能性といったら……。

 もっとも、マルタンはあくまで傍観者であり、彼の視線を通して奔放な夫人の行動が客観的に、徐々にサスペンス仕立てで描かれていく。このあたりの冷静な距離感も、メロドラマとは一線を画す新鮮さがある。

 ちなみに原作(と映画)の題名は「Gemma Bovery」。だからアータートンが選ばれたというわけでもないだろうが、ふくよかな体型にローラ・アシュレイ風の衣装を纏った彼女の英国っぽさが、ドラマのエスプリに色を添える。だが最大の功労者はやはりルキーニだ。ふだんは嫌味なほどにインテリ色の濃いアクのあるキャラクターで知られる彼が、ここでは控えめで素朴な味を醸し出し(といっても劇中でフローベールを論じるぐらいのインテリには変わりないが)、どこか可愛らしさも秘めた初老男の哀愁を漂わせてアータートンの溌剌とした若さを際立たせる。知的官能映画の決定打と言えるだろう。(佐藤久理子)

映画.com(外部リンク)

2015年7月9日 更新

本文はここま>
でです このページの先頭へ