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Dearダニー 君へのうた
2015年9月5日公開

Dearダニー 君へのうた

DANNY COLLINS

PG121072015年9月5日公開

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5.0

ネタバレアル・パチーノの魅力が半端ない

この映画を観て、つい比べてしまったのが、 昨年に観たビル・マーレイの「ヴィンセントが教えてくれたこと」だった。 昔よく観た俳優さんが、年をとって出演した作品。 内容も、ハートフルな家族もの。 ビル・マーレイの方は残念ながら、その魅力は無く、☆2つという評価に終わった。 そして、この作品。 名優アル・パチーノが、人気を博したものの、今は新たな音楽活動もせず、昔の人気の曲で 好き放題自堕落に生きているアーティストを演じた。 酒・若い女、ドラッグ・・・・と落ちぶれた男を演じるのだけれど、 ジョン・レノンの手紙を読み、自分の人生をやり直そうと決意する。 その突然の決意が、少しの違和感もなく、納得できる。 ダニー・コリンズという人間性の中に、迷い・後悔がひそんでいる事。 そして、そのキッカケを彼は、待っていたのだ・・・という納得させる材料を、 見事に含ませて演じる、アル・パチーノの素晴らしさ。  そして、とんでもなく調子ノリで、情けなく、腹立つのだけれど、 どーしよーもなく、魅力的なのである。  観客でさえ、その魅力に捕らわれてしまうのだから、作品の中で、 無茶苦茶なのに、ダニーが受け入れられていくのが、 ごく自然で、だからこそ、息子が、受け入れてしまう事への何とも言えない苛立ちさえも、 感情移入してしまうのだ。  きっと、この辺りが、「ヴィンセントが教えてくれたこと」との違い。 ビル・マーレイとアル・パチーノとの格の違い・・ということだろうか。  アル・パチーノだけではなく、その他のキャストも、まぁ、素敵だった。 アネット・ベニングも可愛いくて、アル・パチーノの掛け合いが、 微笑ましく、心が躍る。   ジョン・レノンの手紙で、人生をやり直そうとしたダニー。 けれど、そう簡単にはいかない。  しっとりとした新曲を披露したいが、昔のヒット曲を聴きたがるファンの声に、ダニーは、断念する。  彼はやめていたドラッグに手を出す。 この作品の好きな所は、人生のやり直しも、劇的でないところがいい。 新曲披露で、拍手喝采で、めでたしめでたしではなく、 挫折しながらも、人生のやり直しを放棄することなく、諦めない貪欲さを、 見せてくれる。  学んだ彼は、メアリーに、「昔の曲を歌いながら、新曲も歌ってみるよ」と言い残す。 人生のやり直しは、劇的でなくていい。 挫折しながら、妥協しながら、それでいいんだよ・・・・・と、  あのお茶目な優しい瞳で、アル・パチーノが言ってくれているように感じるのだ。 最後のシーン。  拒絶していた息子は、横で医師が、名前で呼ぶかどうかの確率論を延々と話す父親に辟易しながらも、その瞬間、父親の手を握る。  アル・パチーノの表情豊かな、場違いな話に、微笑み、 握られた手を観て、あたたかい感情がこみ上げる。  人生は、彼のように、貪欲で、おおらかでなければならない。 そして、失敗も挫折も、許されるのだと。  完璧ではないダニーを観ながら、そんな何とも言えない勇気が湧いてくる。 全編、ジョン・レノンの曲が流れるが、 それさえも気付かないくらい、 全篇アル・パチーノの魅力が、溢れ出している秀作だ。

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