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ムカデ人間3
2015年8月22日公開

ムカデ人間3

THE HUMAN CENTIPEDE III (FINAL SEQUENCE)

R18+1032015年8月22日公開

kot********

4.0

インディーズ作品の拡げ方と結び方

「ケツの穴に口を繋いだらメッチャおもろいやん!」という閃きから始まった『ムカデ人間』シリーズ。 『1』では、インディーズ作品らしい、まだ拙い表現ながらも、斬新でキャッチーなアイディアと、ハイター博士という強烈なキャラクターで世界的な注目を集めた。 『2』では、ビジュアルをモノクロ映像に変え、残酷ドラマとアーティスティックなグロテスク表現で、またも世界中で拒絶反応という関心を引く。 また、不憫な自閉症の主人公マーティンが恐怖の悪夢となって観客の脳裏に残った。 『3』では、製作をアメリカに移して、ホラーから社会風刺に路線変更し、堂々たるアメリカンコメディを作り上げる。 そして、前2作の主演俳優に新たな活躍をさせる、集大成の作品となった。 トム・シックス監督は、最初から3部作の「ムカデ人間のような連結状態」を構想していたらしい。 メタ構造、メタメタ構造と、常に前作の映画を観て着想を得た主人公の物語になっている。 さらには、監督自身も登場するという特異なシリーズ構造。 とにかく発想が豊かで、ホラーでもコメディでもジャンルに挑戦する気概と、それを実現できる幅広い表現力を持っている。 トム・シックス監督は、インディーズからワンアイディアを育てていくことで、世界的な話題・制作環境・技術などをステップアップして手に入れてきた、クリエイターの鑑といえるだろう。 『3』では、前2作の主演俳優に、前回と全く逆の性格の役柄を与えることで、大功労者である彼らの素晴らしい演技力の幅を、世界に知らしめている。 監督の義理堅さには、感動を覚えてしまう。 __ この『3』、超ブラックコメディとして、メチャクチャ面白い! 特に所長室のシーンは、全てシチュエーションコントみたいなもの。 所長・会計士・秘書のトリオが大好きだ! 3人のもとに、ゲストが訪ねて来るという設定のコント番組があったら、いくらでも観ていられる。 特に、ボス所長を演じるディーター・ラーザーの芸達者ぶりには驚かされる。 「ファーーーーーーック!」「ク・リ・○・リ・ス!」の大絶叫。 秘書の尻を凝視しながら舌を丸めるいやらしい顔。 星条旗を抱きながら頬をなすりつける恍惚の姿。 天を見上げるダブルピース。 この世の下劣・罵詈雑言をすべて詰め込んだキャラクター、気狂い過ぎて食人鬼でもある。 表情・動き・発声、全てのコメディ演技が巧すぎて、何度観ても笑ってしまう。 ドワイト会計士を演じるローレンス・R・ハーヴィーも、狂人の相方として最高の仕上がり。 『2』では一切言葉を発しなかった彼が、冒頭でにこやかに口を開いた瞬間に驚きがある。 おどおど目が泳ぐ演技など、細かい表現がとにかく巧い。 秘書に恋心を抱きながらも相手にされず、所長のセクハラ行為を見て嫉妬と興奮を感じる顔が、たまらなく面白い。 知事訪問のリハーサルのために、知事を演じる所長、所長を演じる会計士、楽しそうな2人が微笑ましい。 秘書デイジー役のブリー・オルソンは、人気ポルノ女優らしい。 かわいい系グラマーボディ、けっこう演技も巧い。 所長にセクハラ…どころかレイプされたあげく…。 元受刑者の父親思いのけなげな娘でもある。 撮影のクオリティが上がって、アメリカ映画的な映像表現を踏襲した、手堅い作りになっていることが、コメディを支えている。 アメリカ南部の砂漠地帯、所長を苛立たせる暑さを、黄味がかった色合いで表現。 所長室の木目の壁や、机や棚などの美術の雰囲気もバッチリ。 ブラインド窓から差し込む光が、所長の額や首筋の汗を照らす感じなど、細部まで抜かりない表現が素晴らしい。

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