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ヴィンセントが教えてくれたこと
2015年9月4日公開

ヴィンセントが教えてくれたこと

St. VINCENT

1022015年9月4日公開

一人旅

5.0

自堕落で愛おしい聖人

セオドア・メルフィ監督作。 母子家庭の少年と隣人の自堕落な中年男の交流を描いたコメディ。 俊英:セオドア・メルフィが傑作『ドリーム』(2016)の前に撮った良作コメディで、ハリウッド屈指の“脱力派”として特異なポジションをキープしている名優:ビル・マーレイが面目躍如たるダメ男演技を披露しています。 酒とギャンブルが大好きな自堕落な中年男:ヴィンセントが、隣家に引っ越してきた母子家庭の少年:オリヴァーの子守を小遣い稼ぎで引き受けたことから、父と子ほど年齢の離れた二人が少しずつ絆を深めてゆく様子をユーモラスに描いた“疑似父子的交流譚”で、『ウォルター少年と、夏の休日』(2003)をイメージさせるお話ですが、本作の場合はだらしない中年男の振る舞いが反面教師的に描かれた“アンチ優等生映画”な作風が特色になっています。 少年と中年男の交流がユーモラスに活写されていて、大好きな競馬場に少年を連れていく、庭の芝刈りを手伝わせる、夜のバーに連れていく…等、少年にはまだ早い大人の世界を半ば強制的に体験させる中年男の自分本位な行動が可笑しく描かれています。そうした中年男の型破りな“子守”スタイルに、当の少年も頑張って順応していく様子が楽しく活写されていて、共通点のまるで無かった二人の間に年の差を越えた友情が芽生えてゆく様子に清々しい気分を味わわせてくれます。 そして、表面上自堕落な生活を送ってきた中年男の心の奥底に秘められた孤独と痛みを少年がしっかりと受け止めて表現するクライマックスは絶大な涙腺破壊力で、ユーモアとペーソスが絶妙なバランスで配分された良作コメディに仕上がっています。 蛇足) ビル・マーレイの脱力演技も絶品ですが、ロシア移民の売春婦を片言の英語で怪演した“本当は超美形”―ナオミ・ワッツの女優魂に脱帽であります。

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