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アクトレス ~女たちの舞台~
2015年10月24日公開

アクトレス ~女たちの舞台~

SILS MARIA/CLOUDS OF SILS MARIA

PG121242015年10月24日公開

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5.0

とらわれた女優

2014年。オリヴィエ・アサイヤス監督。今や大御所の映画女優はデビュー作の戯曲で世話になった演出家の授賞式に出ようとしている。彼女には別の演出家からリメイクの話が持ちかけられるが、当時演じた20歳の女性役ではなく、彼女に翻弄される40歳の会社社長の役だった。戸惑う彼女に演出家の死の知らせが舞い込んで、、、という話。 原題「マローヤのヘビ」は演出家が住む渓谷に現れる神秘的な雲のこと。演出家の圧倒的な影響力の下にある女優は、もはや住む人のいない演出家の家で稽古に励み、雲を見るのを楽しみにしている。そしてついに雲を見るとき、それまでつきっきりで世話をしてくれた女性秘書の行方がわからなくなる(ここが山場)。これは死んだ演出家の呪い、が言い過ぎならば嫉妬、情念の現れなのではないか。演出家の家に同居するようになってから女性秘書は徐々に女優が投げつける芝居と現実を混同した言葉に耐えられなくなっていくわけだし、雲の中をドライブしたときには吐いていた。 そもそも、女優はかつて演じた芝居に(と同時に当時の自らの若さに)とらわれており、今回若い女性を演じる「新しい女優」への複雑な感情を募らせ、それを契機に自らを省みている。かつての役柄を見つめ、今の役柄を見つめ、そして実生活を見つめる女優。つきつめればそれは、デビュー作に、その演出家にとらわれていることではないか。 自ら積極的にとらわれているようにも見える女優と、起源でそれを引き起こしていた演出家の情念の形象化としての「マローヤのヘビ」。

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