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しあわせへのまわり道 (2014)

LEARNING TO DRIVE

監督
イザベル・コイシェ
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3.50 / 評価:325件

解説

『ナイト・トーキョー・デイ』などのイサベル・コイシェ監督がメガホンを取り、パトリシア・クラークソンと名優ベン・キングズレーが共演を果たした感動作。性別も人種も宗教も異なる男女が、車の運転を通して少しずつ心を通わせていく様子を描く。原作は The New Yorker に掲載されたエッセイで、パトリシアが映画化を熱望。人生のどん底から少しずつはい上がり、新たなステップを踏み出すヒロインの姿が共感を呼ぶ。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

ウェンディ(パトリシア・クラークソン)はニューヨークで書評家としての成功を手にしていたが、長年共に暮らしてきた夫にある日突然捨てられる。一人取り残された彼女は悲嘆に暮れ、さらに自分で車を運転しなければならないことに気付く。ウェンディはインド人タクシードライバーのダルワーン(ベン・キングズレー)の手ほどきを受けることに。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2015, BPG Releasing, LLC. All Rights Reserved.
(C)2015, BPG Releasing, LLC. All Rights Reserved.

「しあわせへのまわり道」「ドライブ」から「ライフ」が見えてくる、ポジティブな“人生考ドラマ”

 長年連れ添った夫から突然離婚を突き付けられた書評家と、祖国を追われたシク教徒のタクシー運転手が、車の運転席と助手席に隣り合わせて、一緒に人生の走り方を学んでいく。「ドライブ」を「ライフ」に準えたとても分かり易く、示唆に富んだ物語が、多民族都市、ニューヨークを車窓にとらえながら、程よいスピードをキープしつつ進んでいく。

 アッパー・ウエストサイドのアパートで夫への未練を断ち切れずに暮らすセレブリティのウェンディは、離婚を機に運転免許証の取得を決意する。彼女が教えを請うのは偶然忘れ物を届けてくれたのが縁で知り合ったタクシー運転手のダルワーンだ。ダルワーンのアドバイスは教習初日から的確で深い。曰く、ハンドルを握ったらまず、すべてを見渡し、左右を視界に収め、1ブロック先を見ること。標識(サイン)を見逃さず、周囲の人々に注意して、彼らの行動を予測すべし。そう、運転は人生そのものなのだからetc。

 教習を重ねるうち、ウェンディはまるでダルワーンの言葉通りに、仕事柄言葉にのみ執着し、夫を無視し続けてきた自分の視野の狭さと、予測の甘さを痛感する。反省すべきはダルワーンも同じだ。政治亡命したアメリカで淋しく暮らす自分の行く末を案じ、故郷の村に住む妹が選んでくれた花嫁の無知に苛立ち、ぎくしゃくした新婚生活を送る彼自身も、気が付けば自分本位で、想定外の展開に少しも対処できていないではないか!?

 しかし、2人は危機に見舞われた各々の境遇を、教習を通して共有し合うことで、上手な人生のハンドリングを会得することになる。教え、教えられる立場を忘れ、車外で起きる日々の喧噪をウィンドウ越しに眺めてみて初めて、向かうべき場所がどこかを知るのだ。

 免許を取ったウェンディは過去と決別してハイウェイに繰り出し、ダルワーンはやがて妻を思いやる家庭人になることだろう。彼なら、言われなき差別が渦巻く新天地でも、その日の気分や設定によって紫紺、朱色、ピンク、赤とカラフルなターバンを器用に巻き替えて、気概を持って彼らしい人生を歩んで行くに違いない。ギリギリで情緒に傾きすぎない“人生考ドラマ”は、車の排気音と共にポジティブな後味を残して走り去っていく。(清藤秀人)

映画.com(外部リンク)

2015年8月27日 更新

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