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裁かれるは善人のみ (2014)

LEVIAFAN/LEVIATHAN

監督
アンドレイ・ズビャギンツェフ
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3.65 / 評価:178件

解説

第67回カンヌ国際映画祭脚本賞、第72回ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞を受賞した、ヒューマンドラマ。権力を振りかざして横暴な土地買収を進める市長に立ち向かう、ある自動車修理工場経営者の男の姿を見つめる。メガホンを取るのは、『ヴェラの祈り』『エレナの惑い』などのアンドレイ・ズビャギンツェフ。『マネー・ピラミッド 札束帝国の興亡』などのアレクセイ・セレブリャコフや『エレナの惑い』などのエレナ・リャドワらが出演する。濃密な人間模様と荒涼としたビジュアルの融合に圧倒される。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

ロシア北部の小さな町で、自動車修理工場を経営しているコーリャ。住み慣れた家で、妻リリア、先妻との息子ロマと生活していたが、市長のヴァディムが彼の土地を買収しようとする。権力を武器に自分の土地を容赦なく奪おうとするヴァディムに激しい怒りを覚えたコーリャは、モスクワから友人の弁護士ディーマを呼んで市長の悪事を暴露して徹底抗戦に挑む。やがて両者の攻防は激化し、思わぬ事態を引き起こす。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2014 Pyramide / LM
(C)2014 Pyramide / LM

「裁かれるは善人のみ」アイロニーたっぷりに、酷薄な<神の不在>の世界を見せつける

 アンドレイ・ズビャギンツェフは、現在のロシア映画の中でも一頭地を抜く鬼才である。デビュー作「父、帰る」は、ある欠損家族によるロード・ムービーが現代ロシアの痛ましい心象風景の寓意として胸に迫った。四作目の長篇「裁かれるは善人のみ」も、ロシア北部の辺境にある海辺の町を舞台に、徹底したミニマルな語り口を通して、過酷なロシアの現実が浮かび上がる。

 自動車修理工のコーリャは妻子と共につましく暮らしているが、とある計画をもくろむ強欲な市長が権力をバックに彼らの土地を買収しようと画策する。コーリャはモスクワから友人の弁護士ディーマを呼び寄せ、市長の悪事を暴露する対抗策に出るが――。

 時おり点描される荒涼とした光景が目に焼き付く。廃墟と化した団地、教会、浜辺に打ち捨てられた廃船と巨大なクジラの白骨。すべてが疲弊し、窒息しそうな閉塞感におおわれた町の風景そのものが、今のロシアの抱える暗部をシンボリックかつリアルに伝えてくるのだ。コーリャが友人たちと“狩り”に興じる場面で、標的として用意される歴代の大統領たちの写真、あるいはマフィアばりの残虐な手口でディーマの口を封じる市長は、まさにギャング映画のようなタッチで描かれ、コーリャの罪状を棒読みする裁判官たちを含めて、辛辣なカリカチュアが随所にみられる。決定的なのは、市長と結託した司祭の腐敗ぶりだ。ラスト、コーリャの家の跡地に建てられた教会の、荘厳さとは無縁な、書き割りのような聖画像は、アイロニーたっぷりに、酷薄な<神の不在>の世界を見せつける。

 しかし、見終わって最も深く脳裡に刻まれるのは、後妻リリアを演じたエレナ・リャドワの名状しがたい表情だ。近年、これほど深い孤絶と疎外感、メランコリーをたたえたヒロインの貌を見たことがない。映画は、彼女の辿った悲劇の根源をこそ凝視すべきなのだと問いかけているかにみえる。(高崎俊夫)

映画.com(外部リンク)

2015年10月29日 更新

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