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ハッピーアワー (2015)

監督
濱口竜介
  • みたいムービー 68
  • みたログ 137

3.32 / 評価:93件

桜子を石打ち刑にしなさい

  • da5***** さん
  • 2017年4月25日 19時23分
  • 閲覧数 1604
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

女性礼賛を結果において主調とした、攻撃的な輪舞。倣(なら)ってこのレビューもわずかにトゲを持つかも。

男性製作者たちの論理性と感性が作品の芯に絡みついているせいか、あかり・純・芙美・桜子にかぎらず作中の少なくとも六、七人の女性は、“すじを通し、通させる”ことへの執着が強い。頻繁に強まりすぎる。彼女らのセリフの何割かは、ゴリゴリッとして言葉の暴力だった。同性・異性どちらに向けても。(そののちに、“すじ”など度外視して極端行為に走りもする。)
一方、夫らは、好感度の拓也も、ストーカー系の公平も、仕事人間の良彦も、結局ただ言い負かされるために各伴侶と出会ったかのように、打たれ弱い草食。
同じ濱口監督の魔術的傑作「PASSION」では、フォワードや攻撃的MFタイプの男性陣が跳躍しまくっていたりしたから、たまたま今回はこうしてみたということか。

演技未経験者ばかりの起用は、特記事項にはならない。今作が各俳優の満を持してのデビュー作だと単に思えばいい。
ただ、桜子役は主演女優四人中、最も演技力が劣った。それでいて容姿端麗度では(審美者による昇降はあろうが)彼女がポールポジションにほぼ居すわりつづけた。本来一番の老け女性をあてがわねばならなかったはずの、子持ちのこの専業主婦の造形は、脚本的にも謎だ。最大の。
母としての桜子の自覚の足りなさが、犯罪級だからだ。

語弊なんていささかもおそれずに私は言うが、健全な未来を明らかに失いつつある2010年代の閉塞日本において、“それでも明日ある”ミドルティーンの息子を育てるということに、この母親はどれだけの覚悟を有して当たっているか? 夫婦の隙間だの“本当の自分”だのゴチャゴチャ考えてる暇があったら、子の世代がまともな夢を描ける社会をつくっていくことに、まずは……家庭人としても社会人としても命懸けになりなさい。あなたの漠然とした不安や欲求不満なんか、今はどうだっていいでしょ? 勘どころにいるんだよ? もっと本気の本気で子育てしなよ。“コトが起こってしまった”以上は、五倍十倍の音立ててわが子を殴りな! それから泣いて泣いて抱き締めなよ。自分が誰かに抱かれようなんて願わないで。親友の動向なんて関係ない。あんたが一番アホや!

というわけで、ほかの三人の女性の造形は特に悪くないし、クラブでのあかりのお祭りシーンなんて、そこで映画をブツッと衝撃的に終わらせてもいいぐらいの良きシュール度だったが、桜子パートは作り直しを私から要望したい。
一案。終盤にこれを加えたらどうだろうか?─────強腰な女性四人でもう一回温泉旅行を敢行、そこで大事故に巻き込まれて四人とも血だらけ、それから芙美は一生車イスだけど夫に手厚く世話されて、まあ堅実にハッピー。あかりは全身骨折から超人的に即快復・復職、おまけに結婚までして人生最ハッピーイヤー。純はもちろん死亡(死に顔が最高にハッピー)。そして桜子は、自慢の顔がメチャクチャになり、精神を病んで自殺未遂を繰り返すけれども、最後は家族と友人たちの真の愛の支えで笑顔を取り戻す。さあ、純の遺影を持って三家族合同でまたまた温泉大旅行!

つまりは、5時間17分ではたぶん足りていない。せっかくの有馬行き映画なのだから途中にたっぷり湯煙シーンがあってしかるべきだし(だってワークショップを延々と撮るぐらいなのだから)、大増量して6時間超で行こうよ?
桜子さん、八つ当たりせずに猛省だけしてくれたら、刑は免除してあげるよ? 映画ファンは鬼じゃないから。
ちなみに、「とにかく胡散臭いワークショップ」や「打ち上げ」や「退屈さもまたプチ伏線である、朗読」に加えて「バスの中での、若い女性のおもろい話」を無編集的に丸々じっくり味わわせてもらえたのは、長尺あってこそのご馳走アラカルトだった。


☆PS☆
関西弁がちょっと不自然に思えた。
二人称代名詞(あんた、の意味)として使われるべき「自分」を、一人称(あたし)としてあかりが使ったり。
必ず関西女性の口から出まくる「おーきに」「うち(私)」「~やん」「~ねんで」「やや(厭や)」「よう~せん」「ほんならな」「ほんま」「何や、みずくさいんちゃう?」がこの映画の中ではまったく聞かれなかった気がする。「~しはる」もかな。
あと、兵庫では不可能は「~へん」より「~ひん」の方が普通かも。
だいたい、ボケやツッコミ(ましてやノリツッコミ)がなさすぎ。あればいいというものでもないが。
それと、“目立な損”が装いの基本である大阪・神戸の女性は、特にピクニック的な機会には、孔雀合戦をみんな頑張るはずなのに、妙にシックだった。
神戸よりも、横浜を舞台にして全編ハマ語で撮ってもよかったかも。

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