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14時間の恐怖 (1951)

FOURTEEN HOURS

監督
ヘンリー・ハサウェイ
  • みたいムービー 1
  • みたログ 3

3.33 / 評価:3件

グレース・ケリーのスクリーンデビュー作

  • rup***** さん
  • 2015年9月8日 23時55分
  • 閲覧数 702
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

このセールスポイントだけをとっても、日本でこれまでソフト化されてこなかったのが不思議と思えるような本作ですが、ようやく日本語字幕の付いたDVDでじっくり鑑賞することが叶いました。

「Gメン対間諜」を手始めとして、1940年代後半にセミ・ドキュメンタリー形式の作品を手掛けてきたヘンリー・ハサウェイ監督によるその応用編のような実録風のサスペンスで、高層階の窓の外で今にも自殺を図ろうとしている男をめぐって展開する異色の内容となっています。

とあるホテルの15階で若い男(リチャード・ベイスハート)が窓の外の縁に立ち尽くしているのを見つけた女性の金切り声から大騒ぎに発展していき、たまたま居合わせた交通巡査(ポール・ダグラス)が話をすると、青年は、その巡査にだけは心を開いていくようになります。深い心の闇を発し続けるベイスハートと実直さと誠実な人柄がにじみ出るダグラスの対照が見事なアンサンブルとなって表れているのが魅力です。

この2人のやり取りが本作のストーリーの要になっているので、「ベンガルの槍騎兵」「海の魂」「死の接吻」「人生模様(クラリオン・コール新聞)」「悪の花園」「アラスカ魂」「西部開拓史(列車強盗のエピソード)」など、2人の男の友情・同志の絆・父子愛・敵対関係等を鮮やかに描き出してきた諸作品と同様に、ここでもハサウェイ監督好みの世界をじっくり堪能することができます。

ハサウェイはロケーションを重視した活劇が得意分野でしたが、都会というコンクリートジャングルにあっても、本作では、高層階の窓の外という「屋外」が主な舞台になっていて、ホテルの15階の窓の外から地上にいる豆粒のような群衆をとらえるカメラの映像が妙に生々しく、映し出される度にざわざわした生理的な恐怖を覚えてしまいます。

そして、本作の作劇の妙の1つは、その後駆けつけてくる青年の母親(アグネス・ムーアヘッド)、父親(ロバート・キース)、別れた恋人(バーバラ・ベル・ゲデス)を通して、青年が自殺を思い立つに至った心の内が浮き彫りにされていくことにもあります。子供の心を支配しようとする母親と権威を失った父親というゆがんだ家庭環境から生じる子供への悪しき影響を描き出すのは、さながら「理由なき反抗」の家庭環境にも繋がっていくような構図で、現代の家庭にも通ずる問題を取り上げていることに先見性を感じます。母親役のムーアヘッドのヒステリックな演技にも凄味がありました。

青年に気づかれぬよう何とか確保をしようと方策を実行に移していく警官たちの奮闘する様子に加え、この騒ぎに出くわした人々の姿も並行して描かれており、下では、その模様を実況中継するマスコミや青年の自殺の時刻を予想して賭けに興じる様子が映し出され、騒ぎが見せ物の様相を見せ始めるのが都会における非情な一面をドライに描き出しています。

そのような多くの野次馬たちが集うなかで出会い惹かれあう若い男女の姿もあります。この2人をジェフリー・ハンターとデブラ・パジェットが演じていて、初々しい二人の姿が緊迫した場面における一服の清涼剤の役割を果たしていました。
ただ個人的には、まだ新人とはいえこの小さな役をデブラ・パジェットが演っているのはちょっと役不足という感があります。デブラは「炎と剣」でもジャネット・リーの妹役という目立たない扱いで、ハサウェイの作品では役柄に恵まれていないのが何とも惜しいですね。

また、表題に書いたグレース・ケリーは、夫との離婚調停に向かう途中にこの騒ぎを目の当たりにする若妻役で、この進行中の騒ぎに気を取られていくことによって離婚調停に思いがけない影響が出るという挿話に登場しています。端役とはいえ、11本という数少ない劇場映画出演作の半数以上が人妻役というグレース・ケリーの原点を観られるのが貴重であり、このスクリーンデビュー作からグレース・ケリーはすでにグレース・ケリーであったことが分かるのも興味深いです。

一点、狂信的な牧師を登場させた部分だけが浮いた感じになってしまって、リアリティに欠けている恨みがありますが、この騒ぎの終局も、リアルに徹し、殊更ドラマチックな描き方とはなっていないことで作品の一貫性は保たれていました。

騒ぎが嘘であったかのように静寂を取り戻す街路の雰囲気と、この騒ぎが当事者の知らないところで他人の人生に思わぬ貢献をした成果を見せて終わっていく辺りにも味わい深いものがあります。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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