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ちはやふる -下の句- (2016)

監督
小泉徳宏
  • みたいムービー 631
  • みたログ 4,753

3.83 / 評価:3,907件

こだわりや焦りを捨てた姿勢が見事な傑作

  • 映画生活25年 さん
  • 2016年5月2日 1時17分
  • 閲覧数 9060
  • 役立ち度 78
    • 総合評価
    • ★★★★★

スポーツや競技などの勝負を描いた作品と言えば、主人公が苦難や逆境を乗り越えて奮闘した末に勝利もしくは善戦し、またついでに恋愛も発展または成就するのが「お約束」というもの。
良く言えば「王道」、悪く言えば「予定調和」というものである。
そんな王道予定調和を期待して鑑賞した方は、本作を不満に感じることだろう。
実際、私の近くで鑑賞していた小学生は終映直後に不満の言葉を漏らしていたし、劇場ロビーでもそんな声が聞こえた。
恋愛要素が盛り上がるような予告編だったが、序盤に申し訳程度にあるだけで、発展どころか進展もしない。
また、勝負の結果が本作の主題ではない。
出来過ぎだろうがありきたりだろうが、とにかく主人公が勝って気分爽快、そんな期待を持って観に来た方々の不評を買うのも無理はないだろう。

しかし私は大いに満足。
「上の句」は絶賛したが、この「下の句」は大絶賛したい。

本作の軸になるのは全国大会の団体戦とクイーンとの個人戦勝負。
しかしその結果が主題ではない。
団体戦はもちろん、たとえ個人戦でも、一人で戦うものでない。
ともに支え合い、力を合わせることの大切さが本作の主題なのである。
そしてそれは仲間内だけでのことではない。
練習の障害になるかと思われた吹奏楽部や、かつての敵など、彼らを取り巻く全ての人々の支えや協力があってこそのことである。
クイーンとの勝負にこだわる千早、A級への昇格を焦る太一。
そのこだわりや焦りが和を乱しかけるが、それぞれが大切なことを見い出し、成長していく。
そして道を見失いかけていた新も、部員たちの新鮮でひたむきな姿に心打たれ、再び道を見い出していく。
勝ち負け以上に、その過程が丹念に描かれている。

勝ち負けがクライマックスだとすれば、それは「上の句」の終盤だったのだろう。
しかしそれ以上に大切なことを、この「下の句」でじっくり描き出したわけである。
原作をおろそかにして勝ち負け(興行)にこだわり、広瀬すず一人に頼りきるような作品だったら、ただの青春アイドルムービーに成り下がっていただろう。

本作からのキャスト、クイーンを演じた松岡茉優も見事だった。
凛としてクールに君臨する孤高のクイーンだが、珍キャラクターへの愛着というゆるい一面を持つ。
そのギャップが面白かったが、ヒロイン以上の圧倒的存在感、まさにクイーンという存在を見事に演じていた。

「上の句」からのキャストで注目したのが「肉まんくん」を演じた矢本悠馬。
原作とは違う体型なのだが「肉まんくん」に見えた。
セリフ回しに向上の余地はあるが、熱さが伝わって来て、今回はある意味で活躍、笑わせてもらった。

それぞれのキャラの個性を活かして役者の魅力を引き出し、緊張感、スピード感、真剣さ、ゆるさ、笑いなど、緩急をバランスよく織り交ぜた脚本・演出の絶妙さは「上の句」同様。
ありきたりな娯楽映画ではありえない作りは、先に述べたように不評を買うこともあるだろうが、本作自身が王道(予定調和)へのこだわりを捨て、原作を尊重し、結末を急ぐ焦りを捨てたからこそ。
大切なテーマを貫く製作姿勢、それでいて娯楽性を維持する手腕は大いに賞賛したい。

続編の製作が決定したとのことだが、本作を上回る作品にするのは難しいのではないかと思えるほど本作は素晴らしい。
「上の句」のファーストシーン、この「下の句」のラストシーンに繋げて完全完結となると結末が見えてしまう気もするが、たとえそれでも、やるからには本作までの魅力を姿勢を維持した傑作を見せてくれると期待したい。

詳細評価

物語
配役
演出
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音楽

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