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図書館戦争 BOOK OF MEMORIES

cyborg_she_loves

3.0

売り込み戦略としては成功かな

原作は、表現の自由を守るための戦いという硬派な側面と、ラブストーリーというわかりやすい側面とを、両方兼ね備えた作品なわけですが。  全体の8割を前者で塗りつぶしてド派手な戦闘シーンで目を惹こうとしたのが映画版なのに対して。  全体の8割を後者で塗りつぶして戦闘モノが嫌いな人にもファン層を広げようとしたのがこのスペシャルドラマ版である。  と言っていいでしょう。  売りこみ戦略としては、うまいと思うし、今でもこれだけ高評価を得ていると言うことは、この戦略は成功したということだと思います。  この作品から入って映画シリーズが好きになったとか、岡田准一さんのファンになったとかいう人が、たくさんいるわけですから。  恋愛なんて単なる好き嫌いという感情の問題なのだから、表現の自由なんて関係ない、と考えてる人たちに、いやでももし表現の自由が禁圧されたら、自然な純愛がこんな運命をたどることだって起こりうるんだよ、ということを見せてくれてるという意味では、なかなか秀逸な作品に仕上がってるとは思います。  私個人の感想としては、純粋な恋愛ドラマとしてこれを見るには邪魔物が多すぎて、ぜんぜん感情移入できませんでしたけど。  自分の純愛を貫くために裁判の被告人にまでなり、記者会見まで開く(しかも自分が聴覚障害者だということを日本中に知らせることになってまで)なんていうストーリーは、まあ普通の感覚で感情移入できるストーリーではないと思うんですけど、いかがでしょうか?  *  あと、ほとんどの人は気づきもしなかった点かもしれませんが、私は非常に気になった点を、メモ代わりに書いておきます。  記者会見で世論を味方につけるというやり方で良化隊の暴挙を止めた、というストーリーは、私には不愉快でした。だって、この作品では世論は図書隊の方に味方したから丸く収まりましたけど、現実世界では世論は滅茶苦茶いかがわしいものにも簡単に味方します。ヒトラーが完全に合法的に、圧倒的な世論の支持に基づいて首相の地位を得たのは周知の事実。この作品自体が危険思想を含んでいる可能性があるということに、これ作ってる人たちは気づいてるのでしょうか?  それから、実物の本を焼き払うシーンは実物の人間を焼き払うシーンと同じぐらいグロテスクで見るに耐えなかった、という意見がありましたが、私はこれに完全に同意します。本は物体なのだから焼いたって放送倫理上は何の問題にもならないのかもしれませんが、本を人と同じぐらい(あるいは、人以上に)愛する人の心情をわかってない、というのは、本当にそのとおりですね。本のために命を投げ出してもいいと考える人たちの姿を描く作品としては、致命的な欠陥だと言ってもいいかもしれません。私も本ヲタクの1人ですんで。

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