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傷物語〈I 鉄血篇〉 (2016)

監督
尾石達也
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3.34 / 評価:934件

われわれは「物語」の何を愛したのか?

  • maa00174 さん
  • 2016年9月26日 21時33分
  • 閲覧数 3254
  • 役立ち度 7
    • 総合評価
    • ★★★★★

ファーストシーンからテレビアニメとの違いを見せつけられ、非常に好感を持った。
私はアニメ「物語」シリーズのファンではあるけれど、いつものクドクドしたモノローグやセリフを「映画」として見せられたらちょっとキツイかな、と思っていたので、それらを大胆に排した、この手法は、少なくとも私にとっては、歓迎すべきことだった。
やはり、映画は映像で見せることが可能なら、映像で見せるべきだと思う。

そのぶん、話がわかりづらくなっている気もしないではないが、そんなのはどうでもいい。少なくとも、物語シリーズのファンには伝わるはずだ。

たとえば、なぜ、アララギはキスショットを助けるのか。
それは「アララギがそういう人間だから」で、それ以上でも、それ以下でもない。そんなことは物語シリーズのリテラシーとしてはイロハのイだ。

モノローグや説明がないから、わからない?

は?

そんなことを言うファンがいたら、私は迷わず「おまえさんは今まで物語シリーズの何を見ていたのだ」と言うだろう。
そんな疑問は「ひたぎクラブ」の段階で感じるべきことだし、その疑問に対しては数多のシリーズを重ねた現在でも(そして、おそらくはこれからも)、「そういう人間だから」としか説明されていない。
そして、われわれファンはそれを飲み込んできたから、本作までたどり着いたはずだ。今さら、「わからない」もないもんだ、と思わずにはいられない。
(加えて言うと、本作劇中にも、それを説明するセリフがちゃんとある)

また、「15分くらいで終わる内容を水増ししている」といった批評も見かけた。これもまた、何をいまさら、という話だ。

はっきり言おう。そんなのは物語シリーズのほぼすべてのエピソードに言えることで、その傾向は、disしている人たちにも好評なファーストシーズンのほうがより顕著である。

ていうか、アニメ「物語」シリーズはこの「水増し」をいかに見せきるか、が演出上の最大のテーマであって、「水増しをしている」ことそのものは不問とすべき作品だ。だから、批評をするなら「水増ししていることを隠しきれていない」と言うべきなのだ。
(もっとも、本作はテレビシリーズに比べれば、水増ししていないほうだと思う)

本作はあくまで「映画」としての完成度を追求している。それゆえに、観客には「物語」世界をある程度理解していることが求められる。
だから、シリーズ全般の時系列的には最初期にあたる作品であるにもかかわらず、ファンでなければ理解が難しいという、少しいびつな作品になっているかもしれない。

だが、考えてみてほしい。われわれはなぜ「物語」シリーズを見るのか?
見続けてきたのか?
そして、映画「傷物語」に至ったのか?

それは、その「いびつさ」こそを愛したからでなかったか。

と、ここまではホメでありシリーズに対する愛情表現なのだが、唯一、本作ではっきりダメだな、と思う部分を最後に書く。

多くの人が書いている通り、3分割はまったくダメだ。
ふつうの三部作(トリロジー)は、一部ごとに起承転結だの三幕構成だのをつけ、その部の中である程度のオチをつけるものなのだが、本作にはそういう意図は全く感じられない。まさに「分割」だ。

商売的にどうこうはひとまずわきに置く。
そういうことはあるかもしれないが、そういう商売自体にはそれほど思うところはない。
が、3分割したことが作品そのものに何の貢献もしていないどころか、はっきりと印象を悪くしているのが最大の問題だ。

映画にはその世界になじむまでの時間がある程度は必要になる。3時間の一本の作品であれば、最初の1時間はそういう時間にあててもよい、ということにもなるだろうし、実際、3本通しで見れば、本作はそういうパートにあたるはずだ。
その導入にあたるパートのみで観客を作品世界の外に放り出してしまっては、作品が正当に評価されるはずもない。

原作の改変をあまりしないことを信条としている以上、3時間の作品にする以外の選択肢などなかったんじゃないだろうか。

しかし、これもまたいびつさではある。
「ファンはそれこそを愛してきたのだとお前自身がいったではないか」という反論も可能だろう。

だが、私が愛したいびつさは、そのいびつさを自己言及的に作品内に取り込むという原作者を含む作り手の試みの結果、生じたものであって、ただ、ぶったぎったものには愛は生まれていない。少なくとも今の時点では。

そう、私はそれでも少し期待しているのだ。後続の作品で、今回の「ぶったぎり」さえ、作品内に取り込んでしまうようなことが起きることを。
まさか、オーディオコメンタリーなどで言い訳をして終わらせるなんてことはしないよな。な!

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