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5.0点
2016年。山田尚子監督。ごく普通の小学校に耳の聞こえない少女が転校してきた。無邪気にいじめてしまうガキ大将の少年はやがて自らいじめの対象となり、暗い中学生活を送る。心を閉ざしたまま高校生になった彼が少女との再会を機に過去を振り返り、周囲との関係を再構築していく、という話。 よくぞこれほど細部にざわざわする要素を盛り込んだ青春映画を撮れるものだと感心。聾唖の美少女をめぐる小学生たちの困惑が暴力となり、その暴力が様々に波及して人間関係を壊していく。特に、いじめの当事者の1人でありながら、聾唖の美少女の振る舞いにも他者への暴力があると喝破する別の少女が出てきたりして、微に入り細を穿つ「権力分析」といってよい。そうだった、子どもの世界とはこういう世界だったと思い出すはず。もちろん、当時はここで語られている表現を持ち合わせてはいなかったので、ただもやもやしていただけだったが。 他者と関わるとはどういうことか。最初の一歩で間違ってしまった子供の姿を通して、すべての人に投げかけている。
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