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ブルーに生まれついて (2015)

BORN TO BE BLUE

監督
ロバート・バドロー
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3.65 / 評価:427件

解説

トランペット奏者、シンガーとして著名なチェット・ベイカーの伝記ドラマ。圧倒的な人気を誇る裏で麻薬に溺れる彼が、ある女性との出会いを機に再出発するさまが描かれる。メガホンを取るのは、プロデューサーとしても活躍するロバート・バドロー。『6才のボクが、大人になるまで。』などのイーサン・ホークがベイカーにふんし、『パージ:アナーキー』などのカーメン・イジョゴ、『ウォークラフト』などのカラム・キース・レニーが共演。およそ6か月の特訓を経て挑んだ、イーサンによるトランペットの演奏が見どころ。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

1950年代、黒人のアーティストたちが中心だったモダンジャズ界へと飛び込んだ、白人のトランペッターでボーカリストのチェット・ベイカー(イーサン・ホーク)。優しい歌声と甘いマスクで人気を博した彼は、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」などの名曲を放つ。しかし、ドラッグに溺れて破滅的な生活を送るようになる。そんな中、自身の人生を追い掛けた映画への出演を機にある女性と遭遇。彼女を支えにして、再起を図ろうとする彼だったが……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2015 BTB Blue Productions Ltd / BTBB Productions SPV Limited. ALL RIGHTS RESERVED.
(C)2015 BTB Blue Productions Ltd / BTBB Productions SPV Limited. ALL RIGHTS RESERVED.

「ブルーに生まれついて」伝説のトランぺッターの生涯、その闇に潜む孤独を不可解な謎のまま潔く提示

 70年代にアルバム「チェット・ベイカー・シングス」が再発されて大ヒットし、チェット・ベイカーのブームと再評価が起こったのはよく憶えている。あの独特の中性的なヴォーカル、とりわけ「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は絶品だった。そして80年代末には、ブルース・ウェーバーのドキュメンタリー「レッツ・ゲット・ロスト」が公開され、アムステルダムのホテルから転落死した事実と相まって、この伝説的なトランぺッターの悲劇的な生涯は半ば神話化された気配がある。

 この映画は、“ジャズ界のジェームズ・ディーン”と呼ばれた50年代の栄光の時代の回想に始まり、ドラッグに溺れた失意の日々から、60年代に自伝映画に出演するも麻薬の売人に顎を砕かれ、前歯をすべて破損するというミュージシャンとして致命的な暴行を受けたチェット・ベイカーが奇跡的なカムバックを遂げるまでを描いている。

 イーサン・ホークの入魂の演技が素晴らしい。冒頭とラストで、ジャズクラブ「バードランド」でのライブシーンがあり、どちらにも登場する「金と女のために演奏する奴は信用できない」と罵倒するマイルス・デイヴィスは彼にとって畏怖すべき存在だった。ウエスト・コースト・ジャズの寵児でありながらも、マイルスのような時代を超越した天才にはなり得なかった根深いコンプレックスが彼を一生、支配したようにも見える。献身的に支えた恋人を裏切って、ふたたび麻薬に手を染め、見放される、自堕落で、脆弱なろくでなし。しかし、そんなチェット・ベイカーのトランペットには、帝王マイルスにはない比類ない憂愁と哀切な響きがあるのもたしかなのだ。映画はこの不遜で自己愛にまみれた芸術家を決してモラリスティックに断罪せず、その底なしの闇に潜む孤独を不可解な謎のままに提示している。そこが潔い。見終えると、「破滅の時にも静けさを」というゴッホの書簡の一節を思い起こさせる秀作である。(高崎俊夫)

映画.com(外部リンク)

2016年11月17日 更新

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