ここから本文です

君の名は。 (2016)

YOUR NAME.

監督
新海誠
  • みたいムービー 6,296
  • みたログ 6.8万

4.12 / 評価:60,273件

天才たちが結び上げた新海ワールド最高傑作

  • いくも さん
  • 2016年8月21日 2時03分
  • 閲覧数 27506
  • 役立ち度 1144
    • 総合評価
    • ★★★★★

昨今ますますディズニーや他国のアニメーションが盛り上がり日本はおいていかれるばかり。ポスト宮崎駿を、ジブリの復権を、誰もが待ち望んでいる。
けれど新海誠はそんな世間の勝手な不安と期待を一蹴し、宮崎駿も細田守も日本アニメの未来も関係なく、かつて1台のMacで作り上げた独自の新海ワールドを新たな到達点に持っていってしまった。

彼の作品はひと目見るだけですぐに新海誠だとわかるくらいに個性が強い。近年増えたCMでは流れた瞬間彼を知らない人すら目を引かれ記憶に残すだろう。
SF的世界観であっても彼は写実的な風景描写にこだわり、それこそリアルよりも圧倒的なリアルを見せ付ける。光を反射する窓、跳ねる雨粒、揺れる木々の葉、陽の差す教室、染められた濃淡の空… よく知る日常の風景が驚くほど濃く鮮やかな形に彩られ、自分たちの住む世界はこんなにも美しかったのかと感嘆させられる。
そんな新海ワールドが極致を見せたのが前作の『言の葉の庭』だった。そしてこの『君の名は。』でさらに進化を遂げる。

新海ワールドは、どの世界観もストーリーもオリジナリティに溢れているが、何故か彼はそれを映像として表現したときに(恐らくわざとなんだろうが)どこか見覚えのあるものに置き換えてしまう。『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』は現実そのものだし、『ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』はエヴァを始めとした既存のSF作品が見え隠れし、『星を追うこども』にいたってはもはや笑えるくらいにジブリまんまである。
常に既視感がつきまとう作品ばかりの中でやっと、この映画はそれを脱したと感じられた。正確には今までの新海作品の総結集というべきだろう。自身の表現方法を最大限に活かし、見たことがあるようでまったく新しい世界を眼前に提示してくれている。

男女の入れ替わり自体は昔から幾度も扱われてきたものであるし、まぶしいくらいの青春は細田守版『時をかける少女』のようで、どうしても会えないすれ違いはタイトルにも引用される往年の名作『君の名は』をモチーフにしているのかもしれない。
しかしこれらがすべて新海ワールドに見事に溶け込み、そして彼にしか作ることのできない誰も見たことのない物語と映像へ昇華された。

新海誠お得意の、観る者の心をえぐるほど絶望的な距離に引き裂かれた2人の物語に、新海作品に欠かせない丹治匠の美術、元ジブリの安藤雅司ほか黄瀬和哉、沖浦啓之、松本憲生、田中敦子ら日本を代表する最高峰のアニメーターたちの作画、物語を内包する詞と唯一無二の音を生みだすRADWIMPSの音楽、そのどれもがこの映画を最高の形で紡ぎだしてくれている。
特に、感情が重すぎる今までの新海作品にはなかったテンポよく繰り出されるコミカルさは、思わず吹き出してしまうほどなのにシリアスとのバランスも完璧で、万人が楽しめる映画を知り尽くした川村元気プロデューサーの手腕を垣間見たような気がする。いつもは賛否が分かれるポエトリーも、距離を隔てても重なる2人を上手く表現していた。
もちろんキャストも素晴らしい。三葉が中に入った瀧のキュートさがたまらない神木隆之介、方言女子のかわいさも東京男子のかっこよさも見事に演じてしまう上白石萌音、男も女も惚れること間違いなしの長澤まさみ、人生の深みを醸し出す市原悦子、その他みんなまるで当て書きされたかのようにキャラクターが活き活きとしていた。

夢だからこその奇跡への喜び、昨日のことすらあやふやな記憶。全ての人の身近にある感情や感覚をすくい上げるからこそ、新海ワールドは人々の胸を打つのだろう。
ほぼ1人で作り上げた映画で数々の賞をとったという生粋の天才クリエイターのもとに各分野の天才たちが集ったこの映画は、なるべくしてなった最高傑作なのかもしれない。

感動も、ドキドキも、切なさも、笑いも、楽しさも、涙も、ワクワクも、驚きも、愛しさも、この映画にはすべて詰まっている。
出会わずとも心が近づいていく恋に、まったく予想外のどうしようもない絶望に、お互いを求めて走り出す疾走感に、運命にあらがう必死さに、永遠を超えて繋がる奇跡に、鳥肌が立つほどの映像と音楽に、観る人の心すべてが揺り動かされる。
エンターテイメントとしての映画にとって、世代を超えて人々を感動させることのできるアニメーションにとって必要なものが、ここにはすべて揃っている。
こういう映画を、待っていた。


P.S.新海誠ファンは特に言の葉、秒速、雲のむこう辺りを見直しておくといいことあるかも。



追記
この映画にメッセージ性はないと書いたが撤回する。
どんなことでも人はいつか忘れてしまい、どんな出来事も記録がなくなればいつかなかったことになり、悲劇は繰り返される。
だからこの映画は、記憶の不確かさを描きながらも覚えていようともがくのだろう。忘れてはいけない人たちのことを心に刻み続けるために。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 泣ける
  • 笑える
  • 楽しい
  • 悲しい
  • ファンタジー
  • スペクタクル
  • 不思議
  • 勇敢
  • 絶望的
  • 切ない
  • かわいい
  • かっこいい
  • コミカル
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ