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グランドフィナーレ (2015)

YOUTH

監督
パオロ・ソレンティーノ
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3.29 / 評価:458件

自分の過去と未来に向き合う、本当の余暇

  • marcoasanishimasa さん
  • 2019年10月6日 21時38分
  • 閲覧数 264
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

原題はYOUTH、テーマは老い。功なり名遂げた人達の過ごすスイスの高級温泉療養地が舞台。夾雑物の無い美しい風景の中で、完璧なリゾート環境の有り余る時間の中で、だからこそ人々は自ずと自分の過去と未来に向き合うことになる。
先ずは言葉の真の意味でのこの「余暇」の時間感覚が、この映画の大前提。
フェリーニの8・1/2もモンテカティーニの温泉療養地が舞台だけど、セレブと言えども時間割りに従って集団で温浴プログラムをこなすのが面白い。ちなみに下着無しの男女混浴は映画的イリュージョンかと。

名曲1曲の栄光と共に生きる老作曲家・指揮者、創作意欲と世評が反比例の老映画監督、今は心肺機能が危なげなまでに肥大した世界的サッカー選手(マラドーナ?)等々が、人生に色々と逡巡する若者と共に対比的に描かれている。
ロボット俳優としての名声に悩む俳優役のポール・ディノが、折に触れて老主人公達と、時に会話で、そして多くは目配せや仕草でやりとりする親密な感じは、この映画の白眉の時間。そしてもう一人、オイルマッサージを施す施術嬢が、仕事後に窓際でTVゲームを手本にダンスをしているのだけど、それが最後にはシンプルソングに合わせてオリジナルなダンスになっていく成長と未来。
老作曲家の娘の失恋、仕事一途だった父との邂逅は、あるあるだけど、ヘルムートバーガーばりの色男に行かずに、毛むくじゃらの登山家と懇ろになるのがいい。老映画監督を支える若き映画スタッフ達の眩しいような若さと熱意は、監督の悲劇と対比的に未来の希望として明るく描かれている。

最後のシンプルソングは、前奏のヴァイオリンこそシンプルだけど、歌自体は現代一流の和声とアレンジで練り上げられたデヴィッド・ラング作の圧巻のオリジナル曲で、なかなかに聞かせる。(シンプルでは決してないけど......) 著名なソプラノのスミ・ジョーはローマのサンタチェチーリア音楽院出身、ヴァイオリンはヴィクトリア・ムローヴァと贅沢な布陣。

上質な衣服としつらえが老いてこそ映えるヨーロッパの文化空間を、単に憧憬の対象とするのはつまらない。老いて尚盛んという「風狂・傾き」と、得意の「詫び寂び」との振れ幅の大きな狭間に、質量共に史上稀なる高齢化社会を迎える我々日本がどのような老いを呈示できるか、はちゃめちゃな未来を夢想。そんな時間を与えてくれる映画でもあった。

詳細評価

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