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海よりもまだ深く (2016)

監督
是枝裕和
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3.88 / 評価:5505件

解説

『海街diary』などの是枝裕和監督が、『奇跡』以来の阿部寛と樹木希林とのタッグで、なかなか大人になれない男の姿を描く感動のホームドラマ。小説家になる夢を諦め切れないまま探偵事務所で働く男が、たまたま実家に集まった母、元妻、息子と台風の一夜を過ごすさまを映す。阿部と樹木のほか真木よう子や小林聡美、リリー・フランキーらが共演。思っていた未来とは少し違う現実を生きる家族の姿が印象的につづられる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

15年前に1度だけ文学賞を受賞したことのある良多(阿部寛)は、「小説のための取材」と理由を付けて探偵事務所で働いている。良多は離婚した元妻の響子(真木よう子)への思いを捨てきれず、響子に新しく恋人ができたことにぼうぜんとしていた。良多、響子、息子の真悟(吉澤太陽)は、良多の母・淑子(樹木希林)の家に偶然集まったある日、台風の一夜を皆で過ごすことになり……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ
(C)2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ

「海よりもまだ深く」思い通りにならない人生をどう生きるか。死者がドラマを動かす、是枝監督の味

 食品に賞味期限があるように人生の出来事にも期限切れがある。過去の栄光は永遠に続かない。愛の冷めた相手は追っても待っても戻ってこない。この映画は、人生の中盤になってもそのことに気づかず、終わってしまった夢を追いかけている良多(阿部寛)を主人公に、思い通りにならない人生をどう生きるかを考察している。

 タイトルの「海よりもまだ深く」は、テレサ・テンが歌う「別れの予感」の歌詞に由来する。去っていく男を溺愛でつなぎとめようとする女の情念を歌い上げたもので、これがラジオから流れる劇中の場面では、樹木希林扮する良多の母親が「海より深く人を好きになったことなんてないから生きていける」という名言を吐く。人生は思い通りにならないものだが、人や物への執着を捨てれば少し楽に生きられることを、この母親は知っているのだ。しかし息子の良多には執着するものが多い。15年前の文学賞で得た小説家の肩書に執着し、自分が不甲斐なくて壊れた家庭に執着している。さらに少年時代の思い出にも。本当に海より深いのは、この男の業かもしれない。

 そんな良多が、息子の野球道具を買うために恐喝のまねごとをするところは、娘のドレスを買うために羊泥棒を働く「レイニング・ストーンズ」の父親と重なる。この映画のケン・ローチ監督と同様、是枝裕和監督は、ダメ男の主人公を平行な目線でみつめ、共感を誘う愛すべき存在として描いている。そして、良い息子にも良い父親にも良い弟にも良い夫にも良い社会人にもなれない良多が、自分によく似た亡き父親の思いに触れることで少しだけ成長する瞬間を鮮やかに切り取る。家族のメンバーから欠落した死者がドラマを動かすのは、「歩いても 歩いても」や「海街diary」と共通する是枝監督の味だが、とりわけ今回は顔も名前もわからない良多の父親が大きな存在感を発揮する。良多と2人の女性(母と前妻)を主軸に展開するドラマが、父親と良多と息子の父子3代の絆の話に帰結する点に妙味のある作品だ。(矢崎由紀子)

映画.com(外部リンク)

2016年5月12日 更新

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