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ルーム
2016年4月8日公開

ルーム

ROOM

1182016年4月8日公開

hik********

4.0

部屋からは出たが、“へや”からは出ていない。

冒頭、母親と過ごす何気ない日常を描いているのだが、場所は窓が無い(天窓を除き)小さな小さな“へや”。 次第に観客は、なにかがおかしい事に気付いていく。 台詞では説明せず、描写で疑念をさりげなく説明しているのが巧い。 不愉快の極みのような実話の拉致・監禁事件をモチーフにしているが、本作の真骨頂は、意外にも、そこから脱出した“後”の展開である。 社会に、世界に、一から順応していく過程をリアルに描いている。 一見、子供に主体が置かれているように見えるが、しっかりと母親の複雑な内面を描写しているのも見事だ。 マイナス点は、後半の展開がやや性急だったところである。 いつに間にか近所の人とも親しくなっていたが、あの辺の描写が割愛して欲しく無かった。 ラストシーンは地味と言えば地味なので、人によってはもしかしたら味気ない、と感じる人もいるかもしれない。 確かに一見、地味な小さな一歩に思えるが、あの母子からすれば非常に大きな一歩なのである。 身体は部屋からは出ることができたが、心はまだ“へや”の中にいる。 目を背けず、しっかりと“へや”と向き合った事で、過去と決別し、本当の意味で“へや”から出ることが出来たのである。 ジャックの「これが“へや”? 縮んだの?」という台詞が絶妙だ。即ちこれは、ジャック自身が大きく成長したということを表している。 ある壮絶な体験をした母と子の物語を、生々しくも繊細に描いた、見事な感動作だった。 (長くなるのでキャストの評に関しては割愛するが、こちらも文句のつけようがないほど素晴らしかった。)

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