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COP CAR/コップ・カー (2015)

COP CAR

監督
ジョン・ワッツ
  • みたいムービー 60
  • みたログ 634

3.06 / 評価:453件

ジュブナイルの核心を描いた傑作

  • yuki さん
  • 2019年2月19日 0時25分
  • 閲覧数 338
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

あまりに等身大なジュブナイルだ。そこがジョン・ワッツ監督の持ち味なんだと思う。2人の少年はパトカーを窃盗し、自業自得で事件に巻き込まれた挙げ句、自らは何も解決することなくただ逃走する。それは彼らが少年だからだ。アメコミのヒーローのように、なにかを解決する力は持っていない。事件を引き起こして、辺りをめちゃくちゃにして、自分たちもめちゃくちゃになって、泣きべそかいて逃げていくただの少年だ。けど、この無力感、少年の持つこの等身大の無力感こそが、ジュブナイルのエモさなのだと思う。

コップ・カーの以前に、ワッツ監督の「スパイダーマン」を鑑賞していた。構造としてはコップカーと酷似している。同じく自分のケツを拭けない少年の話だ。あの映画に対して私は、ヒーロー映画なのに、無責任でかつ成長すら描けていない、と批判した。いまはその評は間違っていたなと思う。成長なんかしなくても、少年って尊いんだ。少年の美しさ、純粋さ、狡猾さ、迂闊さ、そういうのをすべて含めた愛おしさがジョン・ワッツの映画にはある。

ここまで感情を揺さぶられたのは、徹底したリアリズムある演出のおかげだろう。ニューメキシコの乾いた空気が画面越しに伝わってくる。キャラクターは多くを語らないので、観客は彼らの胸の内を推察するしかない。それによって関係性や事件の背景を考える楽しさが生まれてくる。とくにケヴィン・ベーコン演じる保安官は秀逸だ。行動の一つ一つに人間味があり、ただの悪人とは言えない魅力がある。証拠となる車を失ってからの逃げ回るサスペンス演出も一流だ。

少年たちはトランクの男に”おとり”に使われ、釣られてやってくる保安官との三つ巴の状態になってしまうが、この構図がとてもおもしろい。保安官が少年たちを許すのかどうかがまずサスペンスになっているし、その瞬間を狙おうとするトランクの男がいて、そして少年はどっちに付くか決めかねている。劇的な銃撃戦こそ起きないものの、サスペンスフルな非常に才能を感じさせるワンシーンだ。
この場面では、大人たちは撃ち合って倒れてしまうわけだが、結果的に大人の揉め事に介入できない子供の非力さが現れていたと思う。
大人が頼れなくなった世界で、少年は車を走らせる。日は地平線に沈み、あたりは帳に包まれる。夜道を回転灯を光らせたパトカーが一直線に走り去る。少年は、ずっと事件に巻き込まれた傍観者だったが、いまは目的を持って疾走している。この頼るもののいない寂しさが、悲しみが、ジュブナイルの痛みなのだと思う。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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