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シマウマ (2015)

監督
橋本一
  • みたいムービー 31
  • みたログ 176

2.64 / 評価:149件

爽やかな青春映画!?

  • osa******** さん
  • 2016年6月5日 1時23分
  • 閲覧数 4133
  • 役立ち度 7
    • 総合評価
    • ★★★★★

絶対読んではいけない、という煽りがついた漫画原作の実写化である。
ただのチンピラだった主人公が、恨みを暴力で晴らす代行を行う回収屋という特異な世界に足を踏み入れ、そこで生きていく決意をするまで、に特化して約100分の映像作品に仕上げている。
物語は原作を尊重しつつ、なかなかうまく纏めているな、という印象。
役者の芝居も良い。
この製作陣は突飛な設定の2次元バイオレンスを地に足を着けた3次元の人間物語に落とし込む事に成功している。
原作の登場人物たちの彼らなりの信念を、こういう形で表現してくるとは驚きである。
その脚本の上手さ、役者達の役解釈の的確さに感嘆してしまった。

映画版主人公のドラは、その能力技能は暴力ではあるがカリスマ性があり、学生時代からやれば出来てしまう奴だ。
自分に自信があり女にもモテるし暴力的な所業のセンスもある。
悪い事に、回収屋への就職も特例のスカウトルート、仕事の先輩は学生時代虐めていた相手、元々センスも能力もあるので初仕事もトントン拍子に上手く行ってしまった。
そんな彼故に仕事をナメている所がある。
新人故の無知さからボスの凄さも理解していないし自分が既にそこに並べると思っている。
つまりはデキる新人がチョーシに乗ってしまうのだ。
会社のルールからはみ出して個人営業をかけて身内からの仕事を半ば強引に請け負ってしまう。
しかもその目的は自分を陥れた筈の過去の女への情と来るから頂けない。
完全に学生気分の抜けてないダメ新人なのだが、妙にデキるから困る。
だがしかし仕事とはそんなに甘く無いのは皆さんもご承知の通り。
勝手に回収対象に決めた相手は自分を凌駕する程の暴力を持ち、馬鹿にしていた先輩からもキツいお灸を据えられる。落としたはずの女性同僚にも凹んだ時には相手にされず慰めてくれない。
社会人一年目、誰しもがぶつかる最初の壁に、どんな闇の職業であってもぶつかってしまうと思えばそれなりに親近感が湧くものである。
主演の竜星涼は原作のドラとは少し違った、この映画の求める、原作よりも幼さと青さの残るドラを自らの若さでもって作り上げた。
前半の粋がってる中に隠れる迷いや揺れや無責任さ、初めて挫折しかけた時の情けなさがとても良い。
原作のドラに思い入れがあるともう少し格好良さが欲しくなるかもしれないが、そこは実写化するに辺り必要な改変と受け入れるしかない。

改変と言えば、大改変、というよりバッサリカットでエッセンスのみ残されたキイヌだが……存在が残されただけでも良しとしたい。
むしろキイヌのコピー部分を何故残したか少しばかり疑問であり、演じる日南響子の現実離れした美麗な容姿と相俟って俄然映画がファンタジックになってしまい、原作未読の方は訳がわからないかもしれないのが唯一の気掛かりだ。
キイヌのカットにより人間関係の多角性が減る事になった網川だが、演じる福士誠治がドラの前に立ちはだかる壁として、強くて弱い哀しい男として昇華させているのでこれまた良改変だろう。

そして、この作品を語るにおいて、何はなくてもアカである。
須賀健太が作り上げたアカという人物、この出来栄えは筆舌に尽くしがたい。
この映画のジャンル、公開規模、注目度から想像して、これを目撃する観客数に限りがある事が地団太踏む程悔しくなるレベルである。
出来ることなら金曜ロードショー辺りで全世界にお披露目したいくらいだ。
突飛なキャラのキレた演技がどうこうではない。
おそらく原作を詳細に読み込んだ上で、原作を完全再現する事に拘り過ぎず、あくまで3次元の人間として具現化させるそのセンスと技術が素晴らしい。
特筆すべきはその作り上げた人物像を的確にアウトプットする能力で、彼が『こう』と思って作ったものを、観客は監督や編集や個々人の感性というフィルターを介した後でも8割はその通りに受け止めるであろう。
これはとても物凄いことだ。
視線、語尾のニュアンス、声のトーン、纏う空気、愛憎の感情、そしてアカと赤澤の切り替えと混ざる割合の配分、全てが的確かつ魅力的に観客を圧倒する。
それでいて原作と映画を地続きに繋ぐ役割も担っているのだから感服しきりである。

その他出演者皆個人的にはこれ以上は無いキャスティング。
グロ映像だけを目当てに鑑賞すると物足りないかもしれないが、映画シマウマの本質はそこもウリだがそこでは無い。
監督の言を借りれば、爽やかな青春映画、との事。
就職1年目の若者の成長を描く青春映画を観る気で観るのが正解のひとつ、なのだが青春映画好きな層に気軽に勧めるのには若干血液と吐物が多いのが困ったところ。
そろそろ書いていて気恥ずかしくなって来るが、演者も賛否両論受け止める気概でいるようなので、1つくらいこんな絶賛レビューがあっても良いだろう。

星4つ、の所をアカを演じた須賀健太への賞賛によりひとつ増やして星5つ。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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