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ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅 (2016)

FANTASTIC BEASTS AND WHERE TO FIND THEM

監督
デヴィッド・イェーツ
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  • みたログ 1.4万

3.83 / 評価:11,410件

大絶賛!シリーズ第2弾も鑑賞決定

ハリー・ポッターシリーズは2001年の第1作以来、全8作を封切り時に映画館で観た。これだけ長いシリーズ物をリアルタイムで観たのはハリポタ以外にはない。本作は時代を遡ったスピンオフで観に行こうか迷ったが映画への好奇心を抑えられず、連れ合いと一緒にシネコンに足を運んだ。平日ながら館内は混雑していて、17年の正月映画における興業のトップを走りそうだ。

本作を観て感じたのは「匂い」である。歴史あるシリーズ物に感じる特有の匂いがある。寅さんシリーズは商店街に漂う和菓子の匂い、釣りバカシリーズは潮風の匂い、007シリーズなら硝煙とドライマティーニという飲んだ事のないお酒の匂い、スター・ウォーズシリーズはレーザーが当たる時の焦げた臭いと惑星タトウイーンの焼けた砂漠の匂い、という具合だ。
そしてハリポタシリーズはあのテーマ曲を聴いた瞬間に、暖炉にくべた薪と古い本の発する紙とインクの匂いがする。こういう古いイギリスの雰囲気が大好きだ。本作ではそれに加えて石炭の匂いと、ラストで大雨が降った時のオゾンの香り(夕立の時に感じるヤツね)を感じた。あるはずのない匂いを錯覚するのも、劇場で映画を観る醍醐味なのだと思う。

ネタバレにならぬ程度にストーリーを書いてみよう。時代は1926(大正15)年、プレゼントを買うためにニューヨークに上陸した魔法学者のニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)は、鞄に大量の魔法動物を隠し運んでいたが、手違いから数匹が逃げ出してしまう。折しもニューヨークでは各所で建物が壊される奇妙な事件が起こっており、これを魔術の仕業だと信じる狂信的な教団が暗躍していた。この2つの事件に関わったとしてアメリカ魔法議会のお尋ね者となったニュートが、ニューヨークで得た仲間の力を借りて事件解決に乗り出すのが大筋の物語である。

いちばんワクワクさせるのが、ニュートが持つ鞄の中の世界である。ニュートが書いた「幻の動物とその生息地」そのものの光景が展開する。ひょんな事から行動を共にする中年男ジェイコブ(ダン・フォグラー)が味わう驚きを、我々観客も追体験するわけだ。魔法動物たちは実在の動物をモデルとする物のほかに、水滴の中に黒い霧が蠢いているような「オブスキュラス」という不思議な存在もいて、そいつが物語の鍵を握ることになる。

こうした魔法動物に対面した時の感覚を、私も味わったことがある。動物園や水族館で未知の生き物を見た時の感じか。いや自然環境の中でも経験がある。かつて私は昆虫採集が趣味で、珍しい蝶を求めて八重山諸島へ旅行した事がある。竹富島を歩いていたら、あちこちから図鑑でしか見た事のない南方の蝶が現れた時の驚き。おそらくダイビングを趣味とする人は、もっと頻繁にこういう興奮を味わっているのだろう。こんな風に映画を触媒にして「過去の自分」に対面できるのも本作の魅力なのである。

シリーズで初めて舞台となったニューヨークが魅力的に描かれていた。私はアメリカの歴史をほとんど知らないが、世界恐慌が起こるのが1929年で、本作の時代より3年後である。まだクライスラービルもエンパイア・ステートビルも建っておらず、ニューヨークが摩天楼と呼ばれる以前の時代であろう。最近観た映画では「この世界の片隅に」の時代考証が大きな話題になったが、それよりもはるかに昔を実写映画で描いているのだ。
街の風景はCGで描いたのかと思ったが、メイキングの写真を見ると精密なセットが組み立てられたようだ。クラシックカーにくすんだ色のコートを着た人々。大恐慌前とはいえどことなく不穏な空気が漂っている。どこまで史実を再現しているのかは知らないが、通りを歩く人々の佇まいがまさに1926年の空気を発しているようだ。日本映画の表現が発達したと言っても、なかなかこういうのを撮るのは難しいだろう。

メインキャラの中で一番好感を持てるのが、唯一のノーマジ(アメリカにおけるマグル)であるジェイコブだ。缶詰工場で働いているがパン屋を開店する夢を持つ愛すべき男で、私たち鑑賞者と魔法世界の橋渡しとなる役だ。ニュートと知り合いになる過程で、マリリン・モンロー似の魔女クイニー(アリソン・スドル)と淡いロマンスまで芽生える。ラストはジェイコブの意味ありげな笑みで締めくくられる。
最後におなじみの特殊効果について。竜巻のようなオブスキュラスが街を破壊する場面、魔法使いが身体を消して瞬間移動する場面(本作にはホウキで飛行する場面はない)、手を触れずに料理が出来上がっていく場面など見せ場の連続だ。中でも最大の見せ場が、破壊された街が修復されていく場面だろう。非常階段が漁師の投げる漁網のように空に浮き上がり、紙が鳥のように羽ばたいていく。しかし実際には「壊れたものが元に戻ることは絶対にない」という真理を踏まえておかねばならないのだ。

詳細評価

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