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ハドソン川の奇跡 (2016)

SULLY

監督
クリント・イーストウッド
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  • みたログ 9,241

4.15 / 評価:7458件

実話を描く、作品の構成力が凄い

  • UrbanDockGoer さん
  • 2016年9月19日 7時49分
  • 閲覧数 17412
  • 役立ち度 377
    • 総合評価
    • ★★★★★

俺は航空機関連メーカーに勤務しているので、航空機関連の話には普通の人より興味を持つ。 この作品で取り上げた事故のニュースははっきり覚えている。 原因となったバードストライク(鳥との衝突)だが、耐バードストライク評価に携わった経験があるので、なおさら興味を引かれたからだ。

なので、絶対観ようと思っていたが、運良く試写会でひと足先に鑑賞させてもらった。



《物語》
2009年1月15日、155人を乗せたUSエアウエイのA320型機はニューヨーク・ラガーディア空港離陸直後に鳥の群れと遭遇。 左右2発のエンジン両方が鳥を吸い込み停止。 高度1000mに達する前に推力を失った。

機長サリーは空港に引き返すのは無理と判断する。人命を救う唯一無二の策として、ハドソン川への着水を決行する。そして、155人全員の命が救われた。


マスコミは機長を称賛し、英雄と騒ぎ立てたが、その裏で事故調査委員会は別のことを考えていた。
「着水する必要があったのか?」
「近くの空港に降りることが出来なかったのか」
「機長の判断ミスでは?」

専門家の間で「空港に帰れたのでは?」という声があったからだ。
調査が進み、エンジン停止地点(位置・高度)から空港に帰れたか否かについて、コンピュターによるシミュレーション計算が行われ、空港への帰着可能という結果が導き出される。


サリーは英雄から一転して、パイロットとして全てを失う窮地に追い込まれる。

《感想》
最初から最後まで実に興味深く観させてもらった。 非常に面白かった。


まず、裏で(と言ったら変か。公式の場では?)機長がこんな容疑者扱いされていたなんて全く知らなかった。少なくとも日本へは「奇跡の生還」しか伝わって来なかったのではないか。 調査委員会は客観的に検討するのは当然なのだが。


そして、その議論がその後どう展開し、どのように決着するのか。その過程が非常に分かり易く、論理的に描かれ、結論に至るまで何ひとつ疑問の残らない完璧さだった。例えば調査委員会の尋問や追及も感情的には「そんなこと聞くか?」と反発を覚えるものの、言っていることは論理的でクリアだ。 だからこそ、機長に迫る事態の強い切迫感が生まれている。


本作のベースとなっている実話そのものが、映画化する価値のある興味深いものだったわけだが、本作の価値はそれだけでは語れない。

ドキュメンタリーのように時系列に沿って淡々と語られていたら、(それでも面白いとは思うが)ここまでは引き込まれない。 本作は全編を並べ直すと、離陸から事故発生、救出、事故調査委員会の初めから結論まで、全てのピースが揃うのだが、時系列には並べられていない。 実は時間が行ったり来たりする。 

基本的には事故調査委員会の調査の展開がストーリーの基軸なのだが、事故当時の記憶に戻ったかと思えば、また事故調査委員会、そして今度は事故前の描写。 という具合に非常に目まぐるしく時間が飛ぶのだ。 凄いのは、それにも関わらず、観ている方が決して混乱することはない。 その見せ方がクリアなのだ。 

逆に、その並べ方になっているがゆえに、機長サリーの心の動きが手に取るようにわかり、サリーの心情に引き込まれる。 クリント・イーストウッドは監督としてこれまでもすでに名作を残しているが、人の心はどう動くのか、心に訴えるにはどう語りけるべきなのかを肌で知っている人なのだと思う。 構成力、脚本が見事だ。

もちろん、トム・ハンクスの名演も作品を支えているのは言うまでも無い。


感動もするが、それ以上に語られた事実と結論に対する納得感の高い作品。
全ての人におススメだが、特に飛行機に乗る機会の多い人は臨場感を味わい易いと思うのでおススメです。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

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