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永い言い訳 (2016)

監督
西川美和
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3.80 / 評価:2622件

解説

『ディア・ドクター』などの西川美和が、直木賞候補となった自らの小説を映画化。『おくりびと』などの本木雅弘を主演に迎え、交通事故で妻が他界したものの悲しみを表せない小説家が、同じ事故で命を落とした妻の親友の遺族と交流を深める様子を映す。共演は、『悪人』などの深津絵里とミュージシャン兼俳優の竹原ピストル。繊細で鋭い心理描写に定評のある西川監督によるストーリー展開に注目。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

人気小説家の津村啓こと衣笠幸夫(本木雅弘)の妻で美容院を経営している夏子(深津絵里)は、バスの事故によりこの世を去ってしまう。しかし夫婦には愛情はなく、幸夫は悲しむことができない。そんなある日、幸夫は夏子の親友で旅行中の事故で共に命を落としたゆき(堀内敬子)の夫・大宮陽一(竹原ピストル)に会う。その後幸夫は、大宮の家に通い、幼い子供たちの面倒を見ることになる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2016「永い言い訳」製作委員会
(C)2016「永い言い訳」製作委員会

「永い言い訳」罪悪感にとらわれもがくダメ男を、本木雅弘が絶妙なおかしみを滲ませて好演

 デビュー作の「蛇イチゴ」から前作の「夢売るふたり」まで、西川美和監督の長編映画は秘密や嘘がモチーフに使われていた。が、自作小説を映画化した「永い言い訳」は、全編が登場人物たちの本音で埋め尽くされている。しかも、普通なら表に出すことはないだろうと思えるブラックな本音だ。

 死者は携帯電話に辛辣なダイイング・メッセージを残す。母親を亡くした少年は「なぜ父ではなく母なのか」と考える。そして、関係の冷え切った妻をバス事故で亡くした主人公の幸夫は、遺族らしい悲しみが湧いてこないことを自覚する。登場人物たちは、ステレオタイプではない生々しい感情を溢れさせるが、それが共感を伴って理解できるのは、「こんなふうに考えてしまう人間」の脆さや愚かさを決して否定しない西川監督の優しいまなざしがあるからだろう。

 冬に始まり冬で終わるドラマは、妻が死んだとき自宅で愛人と情事にふけっていた幸夫の贖罪の道をたどっていく。幸夫は自分の行動を恥じるが、誰にどう償っていいのかがわからない。なにせ浮気を責めるべき妻は死んでしまったのだから。妻に謝る機会も許してもらえる機会も永遠に失った幸夫は、罪悪感の落としどころがみつからずにジタバタする。その姿を、本木雅弘が絶妙なおかしみを滲ませて好演する。ダメ男演技は「海よりもまだ深く」の阿部寛といい勝負だ。

 贖罪の一環として、幸夫は妻と同じバス事故で亡くなった妻の親友の子供たちのベビーシッターを買って出る。そこから始まるのは「気づき」の日々だ。子供たちとの距離を縮めるにつれ、幸夫は誰かに必要とされる喜びを知り、ある種の達成感を得る。また、泣くこと、忘れることの大切さを人に諭すことで、それができない自分の内面を覗き見ることにもなる。そんな幸夫の心象風景を、自転車で登る坂道や、事故以来伸ばしっぱなしの髪の毛を通してさりげなく物語る演出が味わい深い。(矢崎由紀子)

映画.com(外部リンク)

2016年10月13日 更新

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